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銀座長州屋 Web Site


はじめに


 装剣小道具って何?と聞かれることがあります。鐔と言われれば、刀に装着されている拳を保護する金具であることは、実物を手にしたことがなくても良くご存知の方も多いと思います。装剣小道具あるいは刀装小道具とは、このような刀を装い堅牢さを高める金具のことです。古くは飾りの少ない質素なものから、貴族の用いる剣などを装飾した華やかなものまで多々あり、時代を反映した文様や図が施されています。
 これをどのように鑑賞したらよいのでしょうか?と聞かれることもあります。
 実は、鐔などの装剣小道具は、江戸時代に実用の道具から離れて工芸品としての位置付けがなされ、茶席やコレクターの集まりなどで鑑賞がされていた美術的価値の高い歴史的遺品です。その背景には、彫金技術や金工装飾の発展があり、精密な彫刻技術と華やかな色金の開発、そして簪、着物のための装飾金具、煙草道具などへの応用など、世の中の要求があったことによるものです。もちろん茶席にて鑑賞される侘び寂びの美の世界は、古いものを尊ぶ意識が根底にあり、古釘を愛玩するように、一見して単なる鉄板に過ぎない古鐔にも美が見出されていました。
 図柄も多々あり、古典的な文様や和歌を素材とした大和絵などの風景画はもちろん、和漢の歴史人物、宗教に関わる人物、伝説の人物や物語も題に採られましたが、江戸時代に隆盛した歌舞伎などの演題や気軽な読み物なども図柄に採られています。図柄を選択する背景には所持者の美意識や武士の理論、あるいは戒めなどがあり、図柄を見るだけでも武家が備えていた意識が分かって楽しめるものです。このような歴史的な背景や美術的な意識、彫刻技法の発展など、単に美しさだけでなく鑑賞の要素は極めて広いものと考えられ、これらを感じとることが鑑賞であると考えています。
 このサイトでは、鐔、小柄、笄、目貫、縁頭、拵などの美しい作品はもちろん、有名作家、図柄の珍しい作品、価格にかかわらず楽しめる要素を秘めている作品などを資料として採り上げ、多面的な解説を試み、世に埋まってしまいそうな遺物の新たな魅力を探ってみたいと考えています。装剣小道具の鑑賞の手引きとしてご利用いただければ幸いです。
 資料はすべて日本刀専門店株式会社銀座長州屋の所蔵品及び旧蔵品です。記事は里文出版より発行されている古美術雑誌
月刊『目の眼』に2001年から連載している『装剣小道具の世界』及び、株式会社銀座長州屋が発行している刀剣総合売買誌月刊『銀座情報』の記事として『銀座名刀ギャラリー鑑蔵品鑑賞ガイド』などで解説したものです。著者は株式会社銀座長州屋にて専ら装剣小道具類の紹介を担当している善財 一です。

 このサイトの総ての文章および写真の複写と無断使用を禁止します。なお、ご利用希望の場合にはご相談ください。

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企画 株式会社銀座長州屋  著作 善財 一
Copyright Ginza Choshuya. Hajime Zenzai. 2009.