諫鼓鶏図透鍔(鐔) |
江戸時代中期 近江国彦根
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諫鼓とは、古代中国の聖天子堯が、その施政に関して諫言しようとする民衆に打たせるために設けた太鼓で、鶏は鶏鳴によって善政を促し、人々を覚醒させる想像上の鶏である。諫鼓鶏とは、君主が善政を施すので諫鼓を用いることもなく苔が生えてしまい、鳥が鼓の音に驚くこともないという、世の中が良く治まっていることのたとえである。 中心に松と竹を据え諫鼓の上に鶏が乗り、周囲では母鶏と雛が遊ぶ長閑な風景である。舞台美術を見るように奥行きを感じさせ、流れるように展開する宗典独特の空間構成はここでも健在である。立体的な肉彫りは、厚さや太さを明確に変えてメリハリをつけ、金銀素銅の本象嵌で色彩豊かに彩られている。表裏のちょっとした変化も面白い。地面を啄む銀の雛は裏面ではお尻がほんの少し見えているだけ。何とも愛らしく、作者の遊び心が感じられる。「諫鼓苔深く鳥驚かぬ」。天下泰平の象徴であり、またそれを希求する心の表れか。この図が刀の鐔にあるという事に意義がある。 |
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