波龍図鍔(鐔) |
江戸時代中期 近江国 |
手に持てばずっしりとした重みを感じる赤銅地は耳を含め全面に高低変化に富んだ波を彫り込んでいる。 金銀露象嵌の飛沫を撒き散らし、波頭が鬩ぎ合う大海原を悠然と龍が渡る。紋高く引き締まった体、鋭い爪、海をも飲み込む勢いで大きく開けられた口からは大気を揺るがすような咆哮が聞こえそうである。 製作当時から現在まで人気の高い宗典の作には大まかに分けて二様ある。最も多いのは鉄地肉彫地透に華やかな色絵象嵌を施し、パノラマ的視野で情景を彫描いたものである。 もう一方は板鐔に立体的かつ詳細な高彫象嵌色絵を展開するもので、この手のものは作品が少なく、また良作が多い。本作のような赤銅地のものは更に希少で、恐らくは依頼を受けて製作したものであろう、迫力満点の入念作である。 |
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