平造脇差
銘 出羽大掾藤國路(業物)

Hira-zukuri wakizashi:
Signed.Dewa daijo Fujiwara no KUNIMICHI
(Wazamono)

山城国 慶長頃

刃長 一尺一寸二分五厘
反り 二分
元幅 七分一厘
重ね 二分一厘

金着二重ハバキ 白鞘入

昭和二十八年福岡県登録

特別保存
1,000,000 円

Yamashiro province
Keicho era (A.D. 1596-1614, early Edo period)

Hacho (Edge length) : 34.1cm
Sori (Curvature) : Approx. 0.61cm
Moto-haba (Width at Ha-machi) : Approx. 2.15cm
Kasane (Thickness) : Approx. 0.64cm

Gold foil double Habaki
Wooden case (Shirasaya)

Tokubetsu-Hozon
1,000,000 JPY

 堀川國廣古参の門人である出羽大掾國路は、初め國道と銘し、後に國路と改め、慶長十八年十月十日、三十八歳の時に出羽大掾を受領した(注)。かつて豊太閤の需にも応えた師國廣から優れた技術と胆力を受け継ぎ、相州正宗や貞宗、志津兼氏を範に名品の数々を手掛けて京の名匠と謳われている。また國路は、承応年間に将軍家綱の命で焼失した祇園八坂神社の大太刀と宝剣の復元事業にも一門を挙げて尽力している。
 この平造脇差は、やや小振りの謹直な書体の銘字が慶長十六年吉日紀の短刀(『銀座情報』二五四号)のそれに酷似した、出羽大掾受領直後とみられる作。身幅と重ねは控えめながら、ごく浅く反った洗練味のある姿。地鉄は板目肌に流れごころの肌を交え、厚く付いた地沸を分けるように太い地景が入って奇麗に肌起ち、淡い沸映りが立って生気が漲る。浅い湾れに互の目を交えた刃文は、刃縁に銀砂のような沸が付いて眩く輝き、刃境に湯走り、金線、砂流しが掛かり、奔放にして華麗な焼刃模様となる。帽子は金線と砂流しを伴い、激しく掃き掛けて浅く返る。國路に特徴的な舟底形茎に刻された銘字は一画一画が神妙。四十路を目前に晴れて受領した國路が精魂込めて打ち上げた作で、地刃溌剌とし、頗る出来の優れた一口となっている。

注…『諸職受領調』に記事がある。