宮城昭守 宮城県白石市
昭和五十九年作 59歳作
刃長 七寸一分六厘
反り僅少(六厘)
元幅 一寸二分四厘
重ね 二分
彫刻 表 爪付護摩箸
裏 梵字
銀着一重ハバキ 白鞘入
昭和59年宮城県登録
450,000 円
Swordsmith: Miyagi AKIMORI
Miyagi prefecture
Forged in 1984, work at his 59 years old
Hacho (Edge length) : 21.7cm
Sori (Curvature) : 0.2cm
Moto-haba (Wdith at Ha-machi) : 3.76cm
Kasane (Thickness) : 0.62cm
Engraving : "Tsume-tsukiGomabashi" on the right face
"Bonji" on the back face
Silver foil single Habaki
Wooden case (Shirasaya)
450,000 JPY
安國寺恵瓊(あんこくじ えけい)(毛利家の臣)は、人を見、時流を読む達人で、所伝では信長の破滅を予言したともいう。しかし関ヶ原では武運無く敗れ、畿内の寺院に潜伏するも捕縛されている。恵瓊最後の恃みは素剣と梵字彫のある、頗る幅広の短刀。恵瓊を捕縛した奥平信昌が短刀を徳川家康に差し出すと、家康は正宗作と看破し、恩賞として奥平に下賜したのである。茶器の名が形状に由来するように、料理庖丁に似たこの短刀は庖丁正宗と命名され、奥平信昌の後は、家康の外孫でもあった四男忠明の家系に伝わり、維新後は伊東巳代治、細川護立の所有となった(『享保名物帳』所載 国宝)。
表題の短刀は庖丁正宗を念頭に、宮城昭守刀匠が精鍛した一口。差表に爪付きの護摩箸が、差裏には安国寺恵瓊遺愛の庖丁正宗と同じ不動明王の梵字が映える。地鉄は硬軟の鉄を上手く卸して錬り鍛え上げられた小板目肌で、地沸が厚く付いて潤い、細かな地景が網状に入り、動感豊かな精良な肌合いとなる。互の目の刃文は古作同様、刃区を焼き込み、刃縁は沸で明るく、沸付いて明るい刃中には細かな金線と砂流しが掛かる。帽子は横に展開して返る。正宗と同じ剣形の茎に「摸庖丁正宗」と作意が明らかにされている。地刃清らかな会心作である。
注…栗原昭秀門人。栗原は戦前、日本刀復活に挑戦。同門から人間国宝宮入昭平、天田昭次を輩出。