備後国 元治頃
刃長 一尺一寸一分二厘
反り 一分三厘
元幅 九分二厘
重ね 二分一厘
素銅一重ハバキ 白鞘入
黒蝋色塗鞘小さ刀拵入
拵全長 一尺七寸三分九厘
柄長 四寸三分八厘強
昭和四十八年兵庫県登録
特別保存刀剣鑑定書
六十万円（消費税込）
Bizen province
Tensho era(A.D.1573-1591, Momoyama period)
About 443 years ago
Ha-cho (Edge length) 33.7cm
Sori (Curvature) approx. 0.4cm
Moto-haba (width at Ha-machi) approx. 3.06cm
Kasane (thickness) approx. 0.83cm
Suaka single Habaki
Wooden case (Shirasaya)
Kuro ro-iro nuri saya, chisa-gatana koshirae
Whole length: 52.7cm
Hilt length: 13.3cm
Hozon certificate by NBTHK
Price 600,000 JPY
驍邦(あきくに)は備後国の刀工で、竜泉子と号し、元治元年、慶応三年の年紀作があるも、師に関する記載はない(注)（『日本刀銘鑑』）。因みに、同時期の備後には福山藩工竹中邦彦がいる。邦彦の刀（『銀座情報』三十四号）は筋違鑢で、驍邦は勝手下がり鑢と鑢目は異なるが、「邦」の字の鑚の太さ、銘形は似ており、驍邦は或いは竹中邦彦に師事もしくは影響を受けたものかも知れない。
驍邦の貴重な作とも言い得るこの脇差は、身幅が広く重ねも頗る厚く、寸法が延びてふくらがやや枯れた、鋭利で頑健な造り込み。地鉄は小板目に小杢目を交えて詰み、粒立った地沸が厚く付き、地景が蠢くように入って地肌に弾力味が感じられ、しかも鉄色明るく鍛えは精良。直刃の刃文は、古名刀同様に刃区下を焼き込み、純白の沸が付いて刃縁締まりごころに明るく、刃中には余分な働きを一切交えずに匂で澄む。帽子はふくらに沿って小丸に長めに返る。浅い勝手下がり鑢が掛けられた茎は錆浅く、銘字が一画一画特に入念に刻されており、驍邦の篤実な人柄を窺わせる。
上級武士の佩用であろう。秋草金具で装われた、格調高い黒蝋色塗鞘小さ刀拵に収められている。
注…驍邦はおそらく一代鍛冶で、すぐに明治維新を迎えたため、作例、文献資料も共に極めて少ない。