東京都目黒区中目黒
加藤祐國 五十五歳作
刃長 二尺四寸二分八厘
反り 五分九厘半
元幅 一寸二分二厘
先幅 八分二厘
棟重ね 二分
鎬重ね 二分六厘
彫刻 表裏 棒樋掻通し
金着一重太刀ハバキ 白鞘入
昭和五十八年東京都登録
Kato SUKEKUNI
Lived in Tokyo capital
Forged in 1983, Work at his 55 years old
Hacho(Edge length) 73.6cm
Sori(Curvature)approx.1.8cm
Moto-haba(Width at ha-machi)approx. 3.7cm
Saki-haba(Width at Kissaki) approx. 2.48cm
Kasane (Thickness) approx. 0.79cm
Engraving: "Bo-hi" kaki-toshi on the both sides
Gold foil single "Tachi" typed Habaki
Shirasaya
祐國(すけくに)刀匠は昭和三年に加藤長左衛門真平の次男として東京の目黒碑文谷に生まれ、名を和明という。加藤家は戦前からの鍛冶職で、銀蔵兼國、亦蔵真國、長之助恒康等が出、戦時中には陸軍受命刀工として活躍した。祐國は恒康に就いて修業し、竜青子と号し、戦後は新作名刀展に出品して努力賞に四回輝いた実力者である。
この刀は鎌倉中期の太刀を範に精鍛された作。身幅広く反り高く、鋒が猪首風に仕立てられて力感漲る姿。地鉄は小板目肌が詰み、地沸が微塵に付いて晴れやかな鉄色を呈する。桜花を想わせる刃を交えた丁子乱刃は高低変化に富み、焼刃は押し合って備前一文字風の重花丁子刃となり、淡雪のような沸で刃縁が明るく、長く柔らかく射した足を遮るように流れる細かな金線と砂流しも自然で、清浄な匂が立ち込めた刃中は霞立つように澄む。帽子は鮮やかに乱れ込んで小丸に返る。製作時そのままの白銀色に輝く茎に刻されている「居治不忘乱(ちにいてらんをわずれず)」の文言は、平時にこそ乱世を忘れず、万が一に備えよ、という『易経』出典の戒め。先の大戦時の苦労を知る注文主の座右の銘であろう。本作に一層の重みを加えている。