脇差
銘 備州長舩清光
永正十二年八月日
Wakizashi: Bishu Osafune KIYOMITSU
Eisho 12 nen 8gatsujitsu

備前国 永正 509年前

刃長 一尺九寸七分
反り 六分二厘
元幅 九分七厘
先幅 六分九厘
重ね 二分六厘
彫刻 表裏 棒樋角止・連樋
金着二重ハバキ 白鞘入

昭和三十七年長崎県登録

特別保存刀剣鑑定書

Bizen province
Eisho 12 (A.D.1515, late Muromachi period)
509 years ago

Ha-cho (Edge length) 59.7cm
Sori (Curvature) 1.9cm
Moto-haba (width at Ha-machi) 2.94cm
Saki-haba (width at Kissaki) 2.1cm
Kasane (thickness) 0.8cm
Engraving ;
 "Bo-hi" kaku-dome and "Tsure-hi"
  on the both sides
Gold foil single Habaki
Wooden case (Shirasaya)

Tokubetsu-Hozon certificate by NBTHK

 永正十二年八月日紀が刻された、長舩清光同作中では頗る時代の上がる刀。清光は播州龍野城主赤松政秀に仕えた天文頃の五郎左衛門尉が有名だが、この清光は一世代遡る。さて、今日刀は二尺以上の刃長を指すが、永正祐定を始め、忠光や勝光、宗光には二尺を僅かに切る長さの刀が多く遺されており、しかも、いずれも出来が優れている。それらを武将は太刀に副えて指し、素早く抜き放って用いたもので、今日脇差とされてはいるが、明らかに「刀」であった。
 表題の作も二尺を僅かに切る長さで、身幅充分で重ね厚く、角止めの棒樋に細樋が連れ、先反が付いて中鋒に造り込まれ、茎は短く片手での使用に最適の刀。地鉄は小板目に杢、僅かに柾を配し、小粒の地沸が付いて澄肌を交え、淡い乱れ映りが立つ。刃文は丁子に小互の目、腰開き気味の刃、蟹の爪を想わせる刃を交え、刃縁締まって明るく、足と葉が盛んに入り、細かな金線と砂流しが断続的に掛かり、刃中は匂立ち込めて冴え、抜群の刃味が想像される。帽子は焼深く、金線を伴って激しく乱れ込み、先が焼き詰めとなる。銘字は備州銘が入念に刻され、裏年紀も貴重。常にみる清光の作とは異なり、むしろ與三左衛門尉祐定を見るような見事な出来映え(注)。史料的価値も頗る高い永正清光の一振である。

注…刃長一尺九寸七分六厘の與三左衛門尉祐定の永正十七年二月吉日紀の脇差(第四十一回重要刀剣)に近似している。

脇差 銘 備州長舩清光 永正十二年八月日
脇差 銘 備州長舩清光 永正十二年八月日 差表
脇差 銘 備州長舩清光 永正十二年八月日 差裏
脇差 銘 備州長舩清光 永正十二年八月日ハバキ
清光押形