刃長 一尺一寸八厘
反り 六厘
元幅 一寸三分
重ね 二分
金着二重ハバキ 白鞘入
平成四年富山県登録
特別保存刀剣鑑定書 (堀川)
Gold foil double Habaki / Shirasaya
Tokubetsu-hozon certificate by NBTHK
(Horikawa)
國安は堀川國廣の末弟。天正から慶長にかけて諸国を行脚した國廣と行動を共にした國安は、志津を想わせる大鋒の刀(重要文化財)、梵字彫のある片切刃造の刀等重美三振等の名品を遺しているように國廣に匹敵する実力者であったが、なぜか受領せず遺作も少ない。専ら國廣の作刀に協力していた為と推考されよう。
この平造脇差は身幅頗る広く、棟が古名刀と同じ三つ棟に造り込まれ、國廣の作に見紛う一振。板目鍛えの地鉄は棟寄りに柾を配して肌起ち、地景が蠢くように入り、地沸が厚く付いて刃寄り黒く澄み、刃区付近から沸映りが立つ。この弾力味のある肌こそザングリと表現される堀川地鉄。ゆったりとした湾れ刃は國廣と同じく区下を焼込み、物打辺で大きく喰違い、刃境に湯走りが掛かって二重刃風となる放胆な風情。刃縁に銀砂のような沸粒が密集し、刃中にも沸と微細な匂が充満して照度が高い。帽子はやや突き上げて小丸に返り、相州伝の名工筑州左の捌帽子を想わせる。茎は國安独特の逆筋違鑢が掛けられ、二字銘は特色(注)が顕著。寡作の國安の人柄を偲ばせる稀有の優作となっている。惜しむらくは、鎺下の鍛え割れであろうか。注…国構えの第二画、ウ冠の第三画が肩落ち形となり、この銘形の作に「出来の優れたものが多い」という(『堀川國廣とその弟子』)。肩落銘は慶長七、八年頃の國廣のそれに同様という(『國廣大鑑』)。