太刀
銘 相模國住人弘邦造
平成二年初春

Tachi
Sig. Sagami no kuni junin HIROKUNI tsukuru
Heisei 2 nen Hatsuharu


廣木弘邦 神奈川県厚木市 42歳作 無鑑査

刃長 二尺二寸一分四厘
反り 七分二厘
元幅 一寸
先幅 六分五厘
棟重ね 二分一厘
鎬重ね 二分二厘
彫刻 表裏 棒樋掻き流し

金着一重太刀ハバキ 白鞘入

平成二年神奈川県登録

Hiroki HIROKUNI
"Mukansa" swordsmith by NBTHK
Atsugi city, Kanagawa prefecture
Forged in 1990 (Heisei 2) / Work at his 42 years old

Hacho (Edge length) 67.1 cm
Sori (Curvature) approx.2.2cm
Moto-haba (Width at Ha-machi) 3.04㎝
Saki-haba (Width at Kissaki) 1.97cm
Kasane (Thickness) 0.68cm
Engraving: "Bo-hi" kaki-nagashi on the both sides

Gold foil single Tachi Habaki / Shirasaya

 弘邦刀匠は名を廣木順一といい、昭和二十三年福岡県大牟田に生まれた。昭和三十九年に隅谷正峰刀匠に師事し、昭和四十三年の新作名刀展に初出品。以来、「志鎌倉に在り」の言葉を胸に、鎌倉時代の備前刀を範に鎚を振るい、鉄と語らい合うようにして、地鉄造りの研究(注①)を深めたのであった。 この太刀は、彫りこそないが、備前長光の太刀、就中、嘉元元年十月日紀の備前國長舩住長光(第二回特別重要刀剣(注②))を熟覧の上で精鍛された作で、身幅重ね充分で、腰反り高く猪首鋒の造り込みはまさに鎌倉中期の太刀姿。区下に掻き流された棒樋により一段と古風で、格調の高さが印象付けられる。地鉄は小杢目肌に微かにうねる柾肌を交えて詰み、地沸が微塵に付いて透き通るような鉄色を呈する。直刃調の刃文は淡雪のような小沸で明るく、小足、葉が盛んに入り、刃中は匂が立ち込めて霞立つように澄む。帽子は浅く弛みごころに小丸に返り、長光の三作帽子となる。茎は浅く反りがついて古作然とし、銘字が神妙に刻されている。鎌倉時代の刀の内実に少しでも迫らんと着実な研究と実践に励んだ廣木弘邦刀匠。その生きた証ともいうべき備前長光写しの優品である。

注①鎌倉の刀を乗り越える上での重要な問題の一つは「『地鉄造り』に在るとの思いを増々強くしております」と述べている(『刀剣美術』四七五号)

注②この長光は弘邦師の身近に長年あったもの。

太刀 銘 相模國住人弘邦造 平成二年初春太刀 銘 相模國住人弘邦造 平成二年初春太刀 銘 相模國住人弘邦造 平成二年初春 白鞘

 

太刀 銘 相模國住人弘邦造 平成二年初春 佩表切先太刀 銘 相模國住人弘邦造 平成二年初春 佩表中央太刀 銘 相模國住人弘邦造 平成二年初春 佩表ハバキ上

太刀 銘 相模國住人弘邦造 平成二年初春 刀身佩裏切先太刀 銘 相模國住人弘邦造 平成二年初春 佩裏中央太刀 銘 相模國住人弘邦造 平成二年初春 佩裏ハバキ上



太刀 銘 相模國住人弘邦造 平成二年初春ハバキ