刃長 四寸三分五分
反り 六厘
元幅 五分
重ね 七厘
茎長 一寸一分二厘
黒檀柄白鞘入
附共箱「平成二年七月吉日 義人作[印]」
Hacho (Edge length) 13.2cm
Sori (Curvature) 0.2cm
Moto-haba (Width at Ha-machi) 1.52㎝
Kasane (Thickness) 0.22㎝
Nakago length: 3.4cm
Kokutan tsuka shirasaya
Kiri box
"Heisei 2 nen 7gatsu kichijitsu Yoshindo saku[seal]"
現代刀界を代表する吉原義人(よしんど)刀匠が、流星(隕鉄)を用いて精鍛(注)した一口。太陽系を構成している小惑星の欠片が地球に到達することがある。多くは大気圏で燃え尽き流星として観測される。中には鉄を主成分とするものがあり、時に地上にまで到達する。隕鉄である。砂鉄から作った鉄より硬度が低く、また冷却温度も異なる難しい素材の性質を、吉原義人刀匠は慎重に確かめながら、鎚を振るって打ち上げたのがこの小刀。細かな地沸がついた地肌は独特の黒味を帯び、筋状に立った鍛着面を光に透かすと、うねる柾、杢となって現れ、常に見る刀の地鉄とは全く異なる不思議な様相で、見れども尽きぬ魅力に満ちている。茎は白銀色に輝き、区上に刻された隷書体の「義人」の印銘も雅味がある。薙刀を想定した造形であろう、収められている拵は、堅木柄と銀の口金も義人師の自作で、優れた美意識を感じさせる。未知の素材を鍛え、個性ある芸術品に仕上げた義人刀匠の、卓越した技術が示された珍重なる作となっている。