平造脇差
銘 行光(加州)

Hira-zukuri wakizashi
Sig. YUKIMITSU (Kaga province)


加賀国 南北朝後期至徳頃 約六百三十七年前

刃長 一尺三寸三分九厘
反り 二分
元幅 一寸三厘
棟重ね 二分一厘
彫刻 表裏 棒樋掻き流し

金着一重ハバキ 白鞘付

本間薫山博士鞘書「至徳比」
『鑑刀日々抄続三』所載

黒蝋色塗鞘合口脇差拵入
拵全長 一尺九寸一分
柄長 四寸六分

昭和五十四年千葉県登録

特別保存刀剣鑑定書 (加州)

価格 八十万円(消費税込)

Kaga province
Shitoku era (A.D.1384-1387, late Nanboku-cho period)
about 637 years ago

Hacho (Edge length) 40.6cm

Sori (Curvature) approx. 0.61cm
Moto-haba (Width at Ha-machi) approx.3.12㎝
Kasane (Thickness) approx.0.64㎝
Engraving: "Bo-hi" kaki-nagashi on the both sides

Gold foil single Habaki
Calligrapht on the Shirasaya,
written by Dr. Honma Kunzan
"Shitoku koro" (Shitoku era)

Put in "Kanto Hibi no sho"

Kuro ro-iro nuri saya, aikuchi wakizashi koshirae
Whole length approx. 57.9cm
Hilt length approx. 14cm

Tokubetsu-hozon certificate by NBTHK
(Kaga province)

Price 800,000 JPY

 加賀国は、奥州へ逃げる義経の安宅関の逸話にも登場する富樫氏や足利一門の斯波氏が領し、古来武士が躍動した北陸道の要衝。同国で活動した刀工が友重や真景などである。友重の遺作の多くは室町時代以降の作ながら、鎌倉末期から南北朝時代とみられる二字銘の太刀(熱田神宮 重美)があり、また越中則重門と伝える真景にも「賀州住真景」銘の貞治六年月日紀の短刀(重文)があり、南北朝期の活発な作刀を証している。『日本刀大鑑』によれば、友重は「板目流れ、柾交り地沸つく」、真景は「板目流れごころにやや肌立ち、地沸良く付き、沸映り立つ」とあり、大和物に通じる古風な風合いの地鉄が特徴である。
 表題の行光二字銘の脇差は、『日本古刀史』の著者本間薫山博士が南北朝後期の至徳頃と鑑定して鞘書している(注)、同銘中最も時代が上がる遺例。身幅広く反り浅く、重ねやや厚い、南北朝後期の典型的姿。板目鍛えの地鉄は刃寄りに柾を配し、太い地景が入り、粒立った地沸が厚く付き、刃の際が黒く澄んで平地に沸映りが立つ古風な肌合いが室町時代の行光とは全く異次元。細直刃調の刃文は微かな小互の目を交え、淡雪のような小沸で刃縁明るく、刃中に溶け込むように足が入り、刃境に打ちのけ風の湯走りが掛かり、処々微かにほつれ、或いは喰い違い、刃中には匂が立ち込めて霞立つ。帽子は僅かに掃き掛け、やや突き上げて小丸に返る。刃方が削ぎ上げられた個性的な形の加州茎には、銘字が太鑚で堂々と刻されている。地刃は熱田神宮の友重や貞治年紀の真景同様に古色があり、加州行光元祖の優質がよく示された稀有の名品であり、かつ資料的な価値も高い。
 付帯する拵は、しっとりとした朧銀磨地の一作金具で装われ、小柄に加賀前田家の梅鉢紋が据えられて格調が高い。

注…『鑑刀日々抄続三』で「経眼したものの中では最も古く、南北朝末期のものとおもわれ、銘鑑に『加賀真景門・永和比』とあるものにほぼ該当し、やや下がる感がある」としている。因みに永和の十年後が至徳。

平造脇差 銘 行光(加州)平造脇差 銘 行光(加州)平造脇差 銘 行光(加州) 白鞘

黒蝋色塗鞘脇差拵 刀身 平造脇差 銘 行光(加州)黒蝋色塗鞘脇差拵 刀身 平造脇差 銘 行光(加州)

 

平造脇差 銘 行光(加州) 差表切先平造脇差 銘 行光(加州) 刀身差表ハバキ上

平造脇差 銘 行光(加州) 刀身差裏切先平造脇差 銘 行光(加州) 刀身差裏ハバキ上

唐草に梅鉢紋図小柄 無銘

秋草図目貫

秋草図目貫

平造脇差 銘 行光(加州) ハバキ