刃長 二尺四寸五分五厘
反り 七分二厘強
元幅 一寸二分二厘
先幅 一寸五厘強
棟重ね 二分一厘半
鎬重ね 二分四厘強
彫刻 表裏 棒樋掻流し
金着二重ハバキ 白鞘入
令和三年現代刀職展薫山賞受賞作家
平成十七年熊本県登録
Gold foil double Habaki / Shirasaya
Kunzan prize winning swordsmith in 2021
熊本の刀工木村家は人吉藩相良家の御用刀工の流れを汲み、戦前から戦後にかけての当主兼重師は鹿児島川内川の砂鉄を用いた自家製鋼に取り組み、その子赤松太郎(注)兼嗣も平成三年より自家製鋼を研究している。光宏は兼重の孫で、鍛冶場を守らんと奮闘する父兼嗣の姿を見て育ち、平成十年に高校を卒業して父に入門。「繰り返し稽古を積んで自信を付けよ」の父の言葉を支えに修業に励み、平成十六年には無我夢中で仕上げた刀を新作刀展覧会に初出品して努力賞と新人賞を受賞。父祖の兼の字を冠して兼光と改銘後も「一生修業」を心に秘めて鎚を振るい、令和三年には現代刀職展で特賞二席薫山賞に輝く。清麿伝を基に備前一文字の丁子乱刃にも挑戦し、新境地を拓かんと日夜研究に励んでいる。
清麿を念頭に精鍛されたこの刀は、身幅極めて広く、重ね厚く反りやや高く大鋒で、棒樋深く掻かれて尚手持ち重く豪壮な造り込み。小板目鍛えの地鉄は地沸が厚く付き、地景が細かに入って弾力味のある肌合い。刃文は丁子に互の目、尖りごころの刃を交えて華麗に出入りし、小沸が付いて刃縁締まりごころに明るく、刃境に細かな金線と砂流しが掛かり、匂で澄んだ刃中には匂足が長く射す。帽子は焼深く、乱れ込んで小丸に返る。茎に太鑚で銘字が堂々と刻されている。優秀賞に輝いた平成十七年の作で、確かな一歩を刻んだ新進刀匠の力作である。