藍鮫皮包鞘合口拵
短刀
無銘 海部

Ai-zame-gawa tsutsumi saya,
aikuchi koshirae
Tanto: no sign KAIFU


拵全長 七寸五分
柄長 二寸三分

短刀 無銘 海部
阿波国 室町時代後期 約五百二十年前
刃長 四寸四分八厘
反り 三厘
元幅 六分一厘
棟重ね 九厘
鎬重ね 一分三厘
彫刻 表 樂天 裏 知命
金色絵一重ハバキ 白鞘付

平成二十六年神奈川県登録

保存刀剣鑑定書(海部)

価格 三十八万円(消費税込)

Whole length: approx. 22.7cm
Hilt length: approx. 6.97cm

Tanto: no sign Kaifu
Awa province, late Muromachi period
About 520 years ago
Ha-cho (Edge length) approx. 13.6cm
Sori (Curvature) approx. 0.1cm
Moto-haba (Width at Ha-machi) approx. 1.85㎝
Kasane (Thickness) approx.0.4㎝

Gold iroe single Habaki / Shirasaya

Hozon certificate by NBTHK
(Kaifu)

Price 380,000 JPY

 茶席で用いられた拵であろうか、海部の短刀が収められている上品な作。粒の細かな藍鮫皮包の鞘は葵葉散図の金具で装われ、螺子式の目貫も金の葵葉図で、これらが鞘の落ち着いた色調に鮮やかに映える。鞘尻に向かって幅広く仕立てられて張りがあり、腰への収まりよく、見栄えも上々。趣味の良い一口となっている。
 冠落造とされた刀身は、身幅の割に寸法が短く、鎬地の肉が削ぎ落されて棟に抜ける独特の造り込み。板目鍛えの地鉄は細かな地景が入り、厚く付いた小粒の地沸が光を反射して潤いのある美しい肌合いを呈する。直刃の刃文は細かな沸の粒子が密集して刃縁が締まり、微かにほつれが掛かる。帽子は端正な小丸。備前物、取り分け、直刃の名手と謳われた長舩忠光を想わせる優品だが、今日の審査では「海部(かいふ)」(注①)と極められている。刀身の「樂天知命」の文字の出典は「天を楽しみ、命を知る、故に憂へず(注②)」(『繋辞上伝』)。己が天命を全うせんと懸命に生きた武士の心情を伝えている。

注①室町時代の阿波の刀工。三好長慶の愛刀、「岩切海部」が特に著名である。通常みる海部の作は肌目強く起った作が多く、本作のようなしっとりとした肌の作は尠ない。

注②意味は「天理の自然に従うことを楽しみ、天命の当然の分に安んじることを知っている、それ故にその心中には何の憂え恐れもない」(『新釈漢文大系63易経下』)。

藍鮫皮包鞘合口拵 短刀 無銘 海部

葵葉文揃金具 鐺

葵葉文金具 栗形

葵葉文金具 目貫

葵葉文金具 目貫

 

短刀 無銘 海部短刀 無銘 海部短刀 無銘 海部 白鞘

 

短刀 無銘 海部 差表切先短刀 無銘 海部 刀身差裏切先

短刀 無銘 海部 ハバキ