刃長 九寸三分
反り 一分三厘
元幅 一寸一分二厘
先幅 一寸一分八厘強
重ね 二分四厘
金着一重ハバキ 白鞘入
平成二十年新潟県登録
Hacho (Edge length) 28.2cm
Curvature 0.4cm
Moto-haba (Width at Ha-machi) 3.4㎝
Saki-haba (width at Kissaki) 3.6mm
Kasane (Thickness) 0.73㎝
Gold foil single Habaki / Shirasaya
粟佐藤則宗刀匠は新潟県長岡市の住。北越の名匠山上則久師の門人である(注)。長岡といえば長尾景虎(後の上杉謙信)が十四才で初陣を飾った栃尾城で知られている。則宗は越後の虎が天下に名乗りを上げたこの地で鎚を振るい、鋼に命を吹き込んでいる。
この短刀は、身幅広く両区深く重ね厚く、鎬筋がきりりと立ち、先反り深く、刀身中ほどに横手が切られて鋒鋭く延びた、おそらく造。おそらく造とは、室町時代の駿河国島田助宗の作に、謙信の好敵手の武田信玄所持と伝える「おそらく」の文字が刻された短刀があることからの呼称で、近くは源清麿が同様の短刀を製作したことでも名高い。本作は、この歴史的な遺物を範に精鍛された意欲作。地鉄は小板目肌が詰み、地沸が厚く付いて鉄色が明るい。焼高い互の目乱の刃文は、粒立った沸が付いて刃縁が明るく、沸足を遮るように細かな金線、砂流しが掛かり、葉が乱れ舞い、そのまま帽子へと乱れ込み、ここにも金線、砂流しが激しく掛かって小丸に返り、そのまま棟を焼き下げる。茎の保存状態は良好で白く輝き、銘字が神妙に刻されている。短寸ながら変化が多彩で出来優れ、見応えは充分である。