刀身 銘 兼景(新々刀)
美濃国 天保頃 約百八十年前
刃長 七寸三分二厘半
元幅 六分六厘
重ね 二分八厘
金着一重ハバキ
昭和四十一年愛知県登録
保存刀剣鑑定書(新々刀)
価格 二十八万円(消費税込)
Tanto: Sig. KANEKAGE(Shinshinto)
Mino province
Tenpo era (A.D.1830-1843, late Edo period)
about 180 years ago
Hacho (Edge length) 22.8cm
Moto-haba (Width at Ha-machi) approx.2㎝
Kasane (Thickness) approx.0.85㎝
Gold foil single Habaki
Hozon certificate by NBTHK (Shinshinto)
Price 280,000 JPY
二分ほどの間隔で刻みを設けた茶石目地塗鞘の小さ刀拵。しっとりとした鞘は塗り込められた細かな貝片が美しく輝き、鉄線唐草文が金象嵌され、雷文が縁に彫られた鐺が拵をピリッと引き締めている。柄は粒揃いの白鮫皮で包まれ、目貫は後ろに下がらない様子が武士の尚武に見立てられた二匹蟹図。縁頭は宝珠、宝袋、松葉と椎茸の吹寄図で縁起が良い。鐔は鉄地に菊と桐図が銀布目象嵌され、下半が膨らんだ障泥形にて安定感がある。籬に菊図小柄も落ち着いている。茶席等での差料であろうか、武士の日常の装いを伝えている。
短刀は江戸後期天保頃の美濃刀工久保藤三郎兼景の鎧通し。天保十二年の『関鍛冶取極掟帳』(『美濃刀大鑑』所収)によれば、美濃刀工は武藤宗九郎兼門を鍛冶頭として結束。その補佐役が兼景で、同掟帳の筆頭に署名がある。この短刀は重ね頗る厚く、ふくらが枯れて無反りの、頑丈な具足の隙間からの、刺突の利便性に特化された造り込み。地鉄は小板目肌の刃寄りに流れごころの肌を交え、細かな地沸が付いて地肌が白く輝き、刃文は美濃物らしい刃縁きっぱりとした尖刃。戦国武将が腰に備えた鎧通しを手本とした良品である。