勝軍草に勝虫図鐔
銘 柳川斎連行 安政三年三月
江戸時代後期 武蔵国江戸住
late Edo period / Edo city, Musashi province
赤銅魚子地竪丸形高彫色絵 made of Shakudo, iroe
縦64.0mm at Lengh 横56.1mm at Width
切羽台厚さ3.9mm at Thickenss
上製落込桐箱入 Special Kiri box
保存刀装具鑑定書ご成約を賜りました Sold out
連行(つらゆき)は柳川直連の門人で江戸時代後期に活躍した柳川派の金工。素銅の緋色を秋茜に用い、澄んだ秋空と川辺の清涼感を極上の赤銅魚子地で表現している。
貴重なのは本作が物情騒然の安政三年の年紀作であること。世は黒船来航後、武士の間で急激に国防意識が目覚め始めた頃であり、世に云う「安政の大獄」は本作の製作の二年後に断行されている。
実は、茜色に身を染めるのは成熟した雄で、表裏五匹は何れも雄の秋茜である。
毛利元就の逸話に勝虫が勝軍草の上で羽根を休める様子を見て、戦勝の吉兆とした話は良く知られている。本作はまさに、一匹の勝虫が勝軍草の上に止まる様子を意匠化したもので、興味深い。銀象嵌で穏やかな川の流れを表現しており、せせらぎの音が漏れ聞こえるようである。
異国の脅威を見据えながら、日の本の平穏な行く末を願う往時の武士の心境を表した作品であろう。