短刀
銘 備州長舩頼光
文明十三年二月日

Tanto
Sig. Bishu Osafine YORIMITSU
Bunmei 13 nen 2 gatujitsu


備前国 文明 五百四十年前

刃長 五寸一分一厘
反り僅少
元幅 八分
重ね 二分四厘

金着二重ハバキ 白鞘入

昭和三十四年大分県登録
(昭和三十九年再交付)
保存刀剣鑑定書

Bizen province
Bunmei 13 (A.D. 1481, mid Muromachi period)
540 years ago

Hacho (Edge length) 15.5㎝
Curvature a little
Moto-haba (Width at Ha-machi) approx.2.42㎝
Kasane (Thickness) approx.0.73㎝

Gold foil double Habaki / Shirasaya

Hozon certificate by NBTHK

  頼光は戦国時代の備前長舩の刀工。これまで知られる遺作は、藤代版『日本刀工辞典(古刀篇)』の長享三年二月日紀の短刀(注①)で、その銘形は赤松政則に仕えた右京亮勝光に酷似(注②)し、勝光一門或いは親族で勝光の作刀に協力した刀工とみられる。勝光と弟左京進宗光は長享二年八月二十日、赤松政則の召しで千草鉄を携えて上洛し、近江で将軍義尚に鍛錬を披露している(注③)(『蔭涼軒日録』)。総勢百名の勝光一行中にこの頼光もあり、勝光、宗光の御前打を援けたのであろう。
 この短刀は、『日本刀工辞典』の作例の八年前に精鍛された頼光の稀有の遺作。勝光に見紛う両刃造で、身幅の割に五寸強と寸短く、鎬筋凛然と立ち、厄除けの梵字の痕跡が遺されている。小板目鍛えの地鉄は、縦方向への強度に配慮されて柾肌を交えて詰み、細かな地沸が厚く付いて透き通るような鉄色を呈す。浅い互の目の刃文は小沸が柔らかく付いて刃縁が明るく、湯走りかかり、これも刺突の威力のためであろう、鋒周りの焼刃がやや強く沸付いて硬度が高められている。茎は掌に収まり良く、両刃造短刀らしく操作性に優れ、栗尻強く張った茎形、銘字も勝光に酷似。名工勝光、宗光兄弟を蔭で支えた頼光の存在と優れた技量を伝える貴重この上ない一口である。

注①『日本刀工辞典』では「右京亮勝光の一門であろう、作品稀れ…」「銘鑑漏れであるがその(勝光・宗光)協力者の一人であろう」とあり、位列は「上作」に位置づけられ、寡作ながら評価は高い。

注②文明十五年二月日紀の備州長舩勝光の脇差(『銀座情報』三五九号)の銘字に酷似している。

注③将軍義尚は長享二年近江の戦国武将六角高頼を討つべく出陣していた。

短刀 銘 備州長舩頼光 文明十三年二月日短刀 銘 備州長舩頼光 文明十三年二月日短刀 銘 備州長舩頼光 文明十三年二月日 白鞘

短刀 銘 備州長舩頼光 文明十三年二月日 差表短刀 銘 備州長舩頼光 文明十三年二月日 差裏

 

短刀 銘 備州長舩頼光 文明十三年二月日 ハバキ