黒蝋色塗鞘合口拵入
拵全長 一尺五寸七分七厘半
柄長 三寸九分六厘
平成六年石川県登録
特別保存刀剣鑑定書
価格 百万円(消費税込)
Kuro ro-iro nuri saya, aikuchi koshirae
Whole length: approx.47.8cm
Hilt length: approx. 12cm
Price 1,000,000 JPY
隅谷正峯(まさみね)刀匠は、昭和五十六年四月に国重要無形文化財保持者に認定された現代刀界の第一人者。鎌倉期の備前刀を研究するため、昭和四十三年から自家製鋼に挑戦、さらに時代の上がる正倉院の上古刀の地鉄を研究して刀子などを手掛けている。元号が平成に改まった頃、ふと立命館大学在学中の恩師桜井正幸の「昔の刀は和銑から造っていた」との言葉が脳裏に蘇り、銑卸しに挑んで映りの再現に成功したという。不動の地位を築いて尚、理論と実践を続け、立ち止まることなく前に進まんとした姿勢に正峯刀匠の偉大さが現れている。
この平造脇差は加賀前田家伝来の青江次直の作を範に鍛造された作。棟を真に造り、身幅広く反り僅かについて寸法が延び、棟寄りに棒樋が掻かれてふくらやや枯れた、南北朝中期の脇差の姿。地鉄は小杢目肌に板目を交え、地景が細かに入って肌目立ち、小粒の地沸が厚く付いて肌が潤い、刃寄り深く澄み、平地に刃文の陰のような映りが立ち現れ、正峯刀匠の研究の跡を窺わせている。丁子乱の刃文は房状の刃、尖りごころの刃を交えて逆がかり、白雪のような小沸で縁明るく、焼の谷から零れて足となり、細かな金線、砂流しが掛かり、匂が敷き詰められた刃中に霞が立つ。帽子は焼を深く残し、沸付いて乱れ込み、突き上げて長めに返る青江帽子。茎は製作時そのままに白く輝き、自ら謙遜し、三流を洒落れた「傘笠(さんりゅう)」を冠した銘字が入念に刻されている。
龍図金具で装われた黒蝋色塗鞘合口拵が付されている。