波に貝図縁頭
無銘 甚五

江戸時代初期 肥後国八代住

鉄槌目地鋤出彫金銀布目象嵌
頭:31.4mm 縁:41.5mm
縁の腰高:8.3mm
上製落込桐箱入

特別保存刀装具鑑定書
(無銘 甚五)
価格600,000円(消費税込)

 e093の西垣勘四郎作と極められた、蕨の若芽を思わせる特異な形状の縁頭に比肩する極めてユニークな作である。唯一無二といってよいほどの変わった形でありながら、どこかで見たことがあるような不思議な感覚を抱く。似ているのだ、立浪形変り兜に。波そのものを瞬間的に固めてしまったような頭には鋤出し彫りと毛彫で荒々しいうねりと、立ち上がって砕け、広がる波が彫り描かれ、金銀の布目象嵌が施されている。上へ上へと伸びあがって頂点でギュッと丸まったこの形状は爆発的な力が凝縮されているようだ。腰の浅い縁は幅41.5mmと極めて大きく、身幅の広い長大な刀にも対応できる。槌目による陰影に富んだ地鉄は黒々として鍛え良く、全面に波と貝が鋤出彫りと毛彫、金銀の布目象嵌であらわされている。おそらく、軽量で堅牢、実用の理に適った越中形兜を発案し、そこに誰もが振り返るような山鳥の羽毛の頭立を飾った細川三斎公の美意識と時代の風に触発されたのであろう。強烈な個性を見る者に印象付ける甚五の本領が遺憾なく発揮された作である。
波に貝図縁頭 無銘 甚五

松図縁頭 無銘 勘四郎

松図縁頭 無銘 勘四郎
立浪形の突起部は頭の裏でしっかり止まっています↑

波に貝図縁頭 無銘 甚五

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