菜種に蝶図鐔 |
江戸時代中期 |
辺り一面黄色だったのだろう。菜の花も今は天を突くような鞘の中に実を結んでいる。菜種油の生産、搾油は西日本が盛んであったが、江戸や水戸でも郊外の農村に行けば当たり前に見られた光景であろう。耳に向かってやや肉を落とした四分一石目地は、不定形な縦長の印象的な変り形。水戸出身の高瀬栄壽は、初代赤城軒元孚の門人と伝えられ、後に江戸へ出て一派をなした。和漢の人物や動植物を詳細な高彫色絵で表現するのを得意とした優工である。本作においても揚羽蝶に施された繊細な色絵やアブラナの葉の写実的な描写に高瀬栄壽の卓越した技量が発揮されている。それにしても何故、花ではなく実(種)を描いたのだろうか。聞けるものなら作者に聞いてみたいものである。 |
Copy Right(c) Ginza Choshuya Co&Ltd reserved |