立鶴図小柄
銘 甲子春作 安達幽斎花押

元治元年春 山城国京都

朧銀磨地金素銅平象嵌片切彫毛彫
長さ:97.2mm 幅:14.9mm
特製落込桐箱入

保存刀装具鑑定書

 薄明の中、天を見上げて佇む一羽鶴。深く彫られた輪郭線の底には小刻みな鏨の跡。その際に細かな毛彫を加えて羽毛の様子を見事に表している。更に風切羽は蹴り彫りのように、トントンと鏨を動かしながら浅く広く地を鋤き取り、金工作品ならではの表現を追求している。鶴の足許は微細な点刻で砂地を表し、点刻が施されていないところは鶴の足跡になっているという心憎い演出。素銅象嵌の足は光の加減で虹色に輝く。安達幽斎は文政六年(1823年)備前国で生まれ、17歳で京都に出て和田一真の門人となった。本小柄の製作年は元治元年(1864年)春。京都では同年7月に池田屋事件と佐久間象山の暗殺事件が起こった。時代が大きく変わろうとする不穏な空気の中、どんな思いで製作に励んだのであろうか。
立鶴図小柄 銘 安達幽斎花押

立鶴図小柄 銘 甲子春作 安達幽斎花押

立鶴図小柄 銘 甲子春作 安達幽斎花押

立鶴図小柄 銘 甲子春作 安達幽斎花押

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