枝梅図鍔(鐔) |
江戸時代後期─明治時代 |
まだ寒気の残る中、百花に先駆けて咲く梅の花。屈曲して上へ上へと伸びる枝、丸く愛らしい花びら。独特の風情ある線刻は後藤一乗とその高弟一琴が得意とした甲鋤彫りである。抑揚のある耳際の打ち返しも一乗一派独特の形状。微細な石目地が早春の冷気を表している。他に一切の色金を用いない鉄地一色の空間に枝梅が浮かび上がり、記憶の中の馥郁たる香りが呼び覚まされる。一的は美作国(岡山県)津山の金工の名家中川家十代目の四男として生まれた。兄は中川一匠と正阿弥勝義である。兄一匠の縁で後藤一乗門となり、後に中川家十一代を襲い、松平家の抱工となった巧手である。 |
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