短刀
銘 備中州住貞次
[元][弘][三]年十月日

Tanto
Signed. Bicchu no shu ju SADATSUGU
[Gen][ko] [3] nen 10 gatsujitsu

備中国 南北朝初期元弘三年

刃長 九寸五分
元幅 九分強
重ね 一分七厘
彫刻 表 腰二筋樋掻流し
裏 棒樋掻流し

金無垢二重ハバキ
白鞘入

平成十八年福岡県登録

特別保存刀剣
2,500,000円

(Item number: 1736)
Bicchu province
A.D. 1333 (Genko 3, Nanboku-cho period)

Hacho (Edge length) : 28.79 cm
Moto-haba (Width at Ha-machi) : Approx. 2.73 cm
Kasane (Thickness) : Approx. 0.52 cm
Horimono (Carving) : Omote"2 suji-hi" kaki-toshi, Ura "Bo-hi" kaki-toshi

Solid gold double habaki
Shirasaya

Tokubetsu-Hozon
2,500,000 JPY

 備中州住貞次の、微かではあるが元弘二年もしくは三年十月日の年紀が読みとれる短刀。貞次の鍛冶銘は、遠く後鳥羽院の御用を勤めた古青江貞次を嚆矢として、鎌倉から南北朝期に同銘工が相継いで活躍したため、本阿弥家では青江の上作の代名詞として極めに多く貞次の名を冠している。
 この短刀の貞次は、同じ元弘年紀の作例がある備中國青江住右衛門尉貞次同人と鑑せられる(注①)。寸が延びて身幅が広く、真の棟に仕立てられて両区も深い造り込みながら反りのない振袖ごころの茎となる、鎌倉後期から南北朝初期に多くみられる典雅な短刀姿。表の護摩箸、裏の深樋も塩梅良く、印象深い仕立て。肌目の美しい板目鍛えの地鉄は、中程から棟にかけて杢目肌が、刃寄りには流れるような柾肌が現れ、随所に地斑と澄んだ肌が玄妙な働きを成し、細やかな地沸が爽やかに湧き立って鉄色冴え、肌目を強調するように地景が蠢く。小沸と匂が巧みに調合されて匂口柔らかな直刃の刃文は、幽かなる小足と喰い違い刃を交え、帽子も上品な小丸に返り、青江物の美点を遍く示した晴朗の一口となっている。大筋違鑢に仕立てられた刃上り栗尻の茎、生ぶの茎孔はロクロ鉋で両面から穿たれて遠い時代を偲ばせ、長文の銘と裏年紀もいかにも雅趣深く、上身と共に賞翫措く能わざるものがある。(商品番号1736)

注…右衛門尉貞次には鎌倉時代末期の嘉暦・元徳・元弘元、三年の年紀銘の作等が他にある。同じ元弘・延元・文和・正平等の年紀を刻す大隈権介平貞次は太刀銘で、茎一杯に大振りの銘を切り、右衛門尉とは別人である。