武蔵国 文久三 四十五歳作
刃長 二尺二寸五分七厘
反り 四分五厘
元幅 一寸四厘
先幅 七分五厘強
重ね 二分四厘
彫刻 表裏 棒樋丸止
金着二重ハバキ 白鞘付
茶微塵塗家紋蒔絵鞘打刀拵入
拵全長 三尺三寸三分
柄長 八寸四分
昭和三十六年京都府登録
特別保存刀剣
(Item number: 1708)
Musashi province
A.D.1861-1864 (Bunkyu era, Edo period)
Work at his 45 years old
Hacho (Edge length) : 68.39 cm
Sori (Curvature) : Approx. 1.36 cm
Moto-haba (Width at Ha-machi) : Approx. 3.15 cm
Saki-haba (Width at Kissaki) : Approx. 2.27 cm
Kasane (Thickness) : Approx. 0.73 cm
Horimono (Carving) : OmoteUra "Bo-hi" maru-dome
Gold-foiled double habaki
Shirasaya
Cha mijin nuri "Kamon" makie saya, uchigatana koshirae
Whole length : Approx. 100.90 cm
Hilt length : Approx. 25.45 cm
Tokubetsu-Hozon
永貞は文政二年(注①)美濃国不破郡垂水表左(おさ)の産。赤坂千手院の刀工から鍛刀を習うと伝えるが、弘化以前に直胤、宗次、清麿等の名工が犇めく江戸で修業したと推考される。江戸青山に鍛冶場を設け、山田浅右衛門の試刀で証された抜群の刃味で江戸の旗本等の支持を得、覇気横溢の多くの名刀を遺している。
この刀は、真の棟に仕立てられ、身幅広く重ねも厚く、適度に反りが付いて中鋒やや延び、棒樋が掻かれてもなお手持ちの重い雄刀。小板目鍛えの地鉄は地沸が厚く付き、地景が密に働き、澄んで晴れやかな鉄色を呈する。浅い湾れに互の目を伴う刃文は、小丁子が組み込まれて複雑さを増し、地中には鋭く尖り込む刃を交えて高低広狭に乱れる出来となり、乱れ込んだ帽子は金線を伴い激しく掃き掛けて浅く返る。沸の強い焼刃は、銀砂を蒔いたように刃縁が明るく、盛んに入った足は元から先まで層状に働く金線と砂流しに寸断されて葉となり、刃中は沸付いて青く冴える。茎の保存状態も完璧で、細鑚の銘字は今尚鑚枕が立つ。
拵の鞘は、茶漆の中に塗り込められた微塵の青貝が煌めく上品な仕上げで、鞘の家紋と共に有栖川菊紋の金具で装われており、柄前も刀と同時代の作。注文主法橋梧菴(ごあん)先生は伊予今治藩医半井梧菴(なからい ごあん)で、国学に漢籍さらに歌道をも修めた名士。歌道を家学とした有栖川幟仁(たかひと)親王(注③)がその業績を讃え、江戸で評判の永貞の刀を贈ったものであろうか。万能の士(注④)半井梧菴の人脈の一端と、永貞の名が花の都に轟いたことを窺わせて貴重である。
(商品番号1708)
注①…文化六年生まれと考えられていたが、『伊勢の刀工』によれば位牌に行年五十一とあったとされ、文政二年生まれとするのが妥当。
注②…愛刀家でもあった熾仁・威仁兄弟の父。
注③…古文献・伝承を博捜し実地調査を行い、『愛媛面影』を著す。