肥前国 寛永五年 五十七歳
刃長 九寸四分三厘
反り僅少
元幅 八分六厘
重ね 二分二厘
金着二重ハバキ 白鞘入
昭和五十三年兵庫県登録
特別保存
Hizen province
Kan'ei 5(A.D.16281, early Edo period)
Work at his 57 years old
Hacho (Edge length): 28.6cm
A little Curvature
Moto-haba (Width at Ha-machi): Approx. 2.61cm
Kasane (Thickness): Approx.0.67cm
Gold foil double Habaki
Wooden case (Shirasaya)
Tokubetsu-Hozon
武蔵大掾忠廣は初銘を肥前國忠吉といい、肥前藩主鍋島勝茂侯に仕えた刀工。元和十年に武蔵大掾を受領して忠廣と改銘している。厳しい戦国期を生き抜き、肥前刀の棟梁として一門を率いた忠廣の地鉄は、古刀期からの作刀であるが故に詰み過ぎることなく古色があり、焼刃にも独特の自然味(注)が漂い、嫡子近江大掾忠廣以降の完成された作風とは趣を異にする味わい深いものである。
身幅が広い割に引き締まった印象のあるこの短刀は、重ねもしっかりとして反りが殆どなく、延びやかで力強く、しかも端正な姿。小杢目鍛えの地鉄は細かな地景が蠢くように入って緻密に肌起ち、厚く付いた微細な地沸の粒子が煌めいて精美な肌合いとなる。得意とする直刃の刃文は、新雪のような小沸が刃縁に厚く付いて光が強く、小足が無数に入り、刃中も沸付いて明るく、一段と沸付いた帽子は突き上げて掃き掛け、長めに返る。焼刃は、特に刃縁の沸の付き方に濃淡変化があり、匂口が太い一本の筋とならない辺りが忠廣初代の真骨頂。茎の保存状態は良好で、太鑚で入念に刻された銘字は廣の第一画目が菱形となって特色が顕著。円熟の技が遺憾なく発揮された寛永五年二月吉日紀の優品である。
注…藤代版『日本刀工辞典新刀篇』には「中直に浅き乱心を持つ喰違も
交る、真の直刃はない、この作風は初期肥前刀の特徴」とある。