平造脇差
銘 備州長舩盛光
應永廿六年六月日(大業物)

Hira-zukuri wakizashi:
Signed. Bishu Osafune MORIMITSU
Oei 26 nen 6 gatsujitsu
(O Wazamono)

備前国 應永二十六

刃長 一尺二寸四分
反り 一分三厘
元幅 九分三厘
棟重ね 二分
彫刻: 表裏 棒樋丸止め・連樋

金着二重ハバキ 白鞘入

昭和二十六年宮崎県登録

特別保存

Bizen province
Oei 26(A.D.1419, early Muromachi period)

Hacho (Edge length): 37.6cm
Sori (Curvature): Approx.0.39cm
Moto-haba (Width at Ha-machi): Approx.2.82cm
Kasane (Thickness): Approx.0.61cm

Gold foil double Habaki
Wooden case (Shirasaya)

Tokubetsu-Hozon

 「応永備前」の尊称があり、高い人気を誇っている盛光の脇差。二つの皇統を押して争った時代を克服した京都の足利将軍と守護大名の治世という複雑な時代を生きた盛光は、先行する鎌倉時代の備前一文字や長舩長光、景光等の作風を範にしながらも独自の工夫を凝らし、杢肌が目立ち、しかも個性的な映りの立つ精良な地鉄に腰の開いた互の目乱刃や端正な直刃の冴えた、新たな作風を展開した。
 表題の平造脇差は応永備前の優質が顕著に示された一口。身幅が広く反りを控えた鋭利で力強い姿(注)に、応永盛光らしい丸留とされた棒樋が掻かれている。深く錬れた板目鍛えの地鉄は「応永杢」と称される杢目が組み込まれ、肌目を強調するように地景が密に入り、刃寄りに暗帯部のある映りが乱れごころを帯びて立ち現れ、焼頭から映りに煙り込むような働きも顕著に温潤味があって美しい。刃文は肩落ち風の刃と小互の目を基調に、小丁子、尖りごころの刃を交えて逆がかり、帽子は盛光らしく乱れ込んでやや突き上げて返る。焼刃は、微細な沸の粒子で刃縁が明るく、肌目に沿った濃密なほつれ、稲妻状に屈曲する小形の金線、砂流しが掛かって刃縁が活発に働き、刃中も沸付いて一際明るく冴える。茎の保存状態は良好で、銘字が神妙に刻されている。常に見る腰開き互の目出来とは趣を異にしているのは、特別の需で鎌倉期の名工長舩景光を範にした故であろうか、出来が優れている。

注…こうした造り込みは室内での危急の際、咄嗟に抜いて用いるべく腰に備えたと考えられる。南北朝動乱が終息した後の比較的な平和な時代とはいえ、将軍義満と有力守護大名、鎌倉公方の間の権力闘争 は常にあり、油断ならぬ時代であった。