銘 奥大和守平朝臣元平
寛政九巳春

Katana: Signed. Oku Yamato no kami Taira no ason MOTOHIRA
Kansei 9 Mi haru

薩摩国 寛政九

刃長 二尺二寸四分六厘
反り 五分二厘
元幅 一寸五厘
先幅 七分五厘
棟重ね 一分八厘
鎬重ね 二分二厘

金着一重ハバキ 白鞘入

佐藤寒山博士鞘書「同作中之傑作之一」

昭和二十六年愛知県登録

特別保存刀剣鑑定書

Satsuma province
Kansei 9 (A.D.1797, late Edo period)

Hacho (Edge length): 68.1cm
Sori (Curvature): Approx. 1.6cm
Moto-haba (Width at Ha-machi): Approx. 3.18cm
Saki-haba (Width at Kissaki): Approx. 2.27cm
Kasane (Thickness): Approx. 0.67cm
Gold foil single Habaki
Calligraohy on the wooden case (Shirasaya),written by Dr. Sato Kanzan
 "Dosakuchu no Kessaku no hitotsu"

Tokubetsu-Hozon

 奥大和守元平は伯耆守正幸と並び立つ、江戸後期の薩摩を代表する優工。伊豆守正房より相州伝を学んだ奥元貞の孫に当たり、延享元年の生まれ。安永六年に家督を相続し、大和守を受領したのは寛政元年。骨太い造り込みが薩摩の国風に応じた剣術にも通じ、しかも刃味優れたことから信頼を得て需要が高まり、特徴のある優品を遺したのみならず、他国の刀鍛冶に技術を伝える指導者としても知名度が高い。
 身幅が広く先幅も広めのこの刀は、鎬筋が張って平肉の付いた、薩摩刀らしい頑強な印象の造り込み。大河の清流を思わせる静穏な板目鍛えの地鉄は微塵に詰んで明るく、全面に湧き立つ地沸が穏やかな地景と共に肌目に沿って現れ、流れるような肌に緊張感を与えている。刃文は、直調の焼出しから始まる尖りごころの互の目乱刃で、焼頭から地中に煙り込む景色は美濃伝の名残り。焼幅は物打辺りが強まるも、焼崩れることなく品良く乱れ、沸付いた帽子も浅く湾れ込んで掃き掛けを伴って返る。明るい沸と鮮やかな匂の複合になる焼刃は、刃縁に真砂をまいたような沸が連なって冴え冴えとし、肌目に沿った太い沸筋が芋蔓状に際立つとともに、地中に流れ込んだ沸も帯を成し、あるいは三日月状の湯走り、淡い飛焼となって地を装う。殊に物打辺りは地刃の沸が一段と強まり、地刃の境の板目肌に伴う元平に特有の釣針状の働きも窺える。薩摩刀における沸の働きは特徴と言われるも、本作は荒ぶることなく強すぎることなく、品位の高い景観を成している。先端が細く剣形に仕立てられた舟底形の茎、その手にした際の質感にも元平の特性が強く現れている。