短刀
銘 出羽大掾藤國路
元和二年八月日(業物)

Tanto: Signed. Dewa daijo Fuji KUNIMICHI
Genna 2 nen 8 gatsujitsu (Wazamono)

山城国 元和  四十一歳作

刃長 九寸強
反り 一分
元幅 八分二厘半
  重ね 二分一厘半
彫刻 表 三鈷柄付剣陰刻
裏 護摩箸

金着二重ハバキ 白鞘入
田野邉深山師鞘書(注①)

昭和二十六年東京都登録

特別保存刀剣鑑定書

Yamashiro province
Genna 2 (A.D.1616, early Edo period)
Work at his 41 years old

Ha-cho (Edge length) 27.3cm
Sori (Curvature) approx. 0.3cm
Moto-haba (width at Ha-machi) approx. 2.5cm
Kasane (thickness) approx. 0.65cm
Engraving:"Sanko tsuka ken" on the right face (Omote)
"Gomabashi" on the back face (Ura)

Gold foil double Habaki
Calligraphy on the wooden case (Shirasaya),written by Tanobe Tanzan

Tokubetsu-Hozon certiicate by NBTHK

 刀史上屈指の名手の一人として広く知られている出羽大掾國路(でわのだいじょう くにみち)は、堀川國廣の古参の門人の一人。初銘國道、後に國路と改銘し、慶長十八年十月十日三十八歳の時に出羽大掾を受領している。受領時には既に高い技術を保持していたが、更なる上達を目指し、名手伊賀守金道を筆頭に丹波守吉道、越中守正俊など京で活躍していた三品家とも技術交流し、遂に精強な地鉄に沸出来の明るい刃文の、相州古作に紛れる作風を完成したのであった。
 この短刀は、國路がその秘術を駆使して精鍛した相州正宗写し。身幅充分で重ねが厚く、ごく僅かに反り、しかも真の棟の中幅が広く造り込まれた古風にして端正な姿。三鈷柄剣、護摩箸の彫刻は刀身に調和して荘厳さと格調の高さを加えている。板目に杢、刃寄りに柾を交えた地鉄は強く錬れて肌起ち、肌目に沿った躍動的な地景が入り、粒立った地沸が厚く付いて沸映りが立ち、古調でしかも明るく冴えた鉄色を呈する。浅い湾れに互の目を配した刃文は、銀砂のような沸で匂口が明るく、刃境に湯走り、金線、砂流しが盛んに掛かり、沸付いて明るい刃中に太い足が入り、ここも躍動感に満ちている。帽子は激しく掃き掛けて浅く返り、返りにも金線と砂流しが掛かる。茎の保存状態は良好で、受領後数年の作になる裏年紀も実に貴重(注②)。名工出羽大掾國路の魅力を存分に堪能できる傑作短刀である。

注①…「迫力ニ富ム相州傳ノ作域也 出来ノ良サニ加へ資料価値モ頗ル髙矣」と記されている。 注②…出羽大掾國路の年紀作は希少ながら、本誌では慶長十六年吉日紀の平安城住國路銘の短刀(二百五十四号)、元和五年 十二月日紀の出羽大掾銘の脇差(三百六十六号)を掲載。