備前国 天文十八
刃長 六寸二分
内反り僅少
元幅 六分四厘
棟重ね 一分九厘
金着二重ハバキ 白鞘入
昭和三十七年大阪府登録
特別保存刀剣鑑定書
800,000
Bizen province
Tenbun 18(A.D.1549, late Muromachi period)
Ha-cho (Edge length) 18.8cm
Slightly curver inward
Moto-haba (width at Ha-machi) approx. 1.94cm
Kasane (thickness) approx. 0.58cm
Gold foil double Habaki
Wooden case (Shirasaya)
Tokubetsu-Hozon certificate by NBTHK
800,000
天文十八年紀の長舩春光の短刀。俗名はないが作者は十郎左衛門尉春光(注①)である。同工は備前、播磨、美作の守護大名赤松政則に仕えた右京亮勝光の曾孫に当たり、「主源家親」と銘のある弘治三年九月吉日紀の両刃造短刀(横田孝雄『所持銘のある末古刀』)がある。これは備中の覇者三村家親の注文打で、春光の優刀が三村氏等戦国の英傑の大きな支持を得ていたことを意味している(注②)。
この短刀は、高位の武将が鎧通しとして腰に備えたものであろう。真の棟で身幅を控えめに重ねを厚く仕立て、僅かに内反りを付けて凛と引き締まった姿。地鉄は板目に杢、刃寄りに柾を配して強く錬れ、地景が太く入って肌起ち、粒立った地沸が厚く付いて淡い沸映りが立つ。直刃の刃文は、純白の小沸が付いて匂口きっぱりと明るく、刃境に湯走りが掛かってほつれごころとなり、一部喰い違って二重刃となり、刃中にも細い沸筋が流れるなど複雑に変化する。焼を充分に残した帽子は、二重刃風に突き上げ、掃き掛けを伴って横に展開して僅かに返る。茎は錆味抜群に優れ、鑚の付け止めが明瞭にして力強く鮮明な銘字に十郎左衛門尉春光の特色が顕著に現れている。短寸の中に春光の優技が凝縮された観のある、出来が極めて優れた一口となっている。
注①…春光の作は十郎左衛門尉もその子七郎衛門春光も共に俗名のない名作が少なくない。
注②…日本海海戦でバルチック艦隊を撃破した東郷平八郎遺愛の刀にも天文十六年八月吉日紀の十郎左衛門尉春光の刀(第二十九回重刀)があった。