銘 肥後國住赤松太郎兼幸作
平成二十八年八月吉日

Katana
Higo no kuni ju Akamatsu Taro KANEYUKI saku
Heisei 28 nen 8 gatsu kichijitsu

熊本県八代市 木村兼幸 三十五歳作

刃長 二尺三寸六分九厘
反り 六分二厘
元幅 一寸二分四厘
先幅 一寸八厘
重ね 二分六厘
銀地一重ハバキ 白鞘入

平成二十八年熊本県登録

七十万円(消費税込)

Kimura Kaneyuki
Kumamoto prefecture
Forged in 2016, Work at his 35 years old

Ha-cho (Edge length) 71.8cm
Sori (Curvature) approx. 1.88cm
Moto-haba (width at Ha-machi) approx. 3.76cm
Saki-haba (width at Kissaki) approx. 3.27cm
Kasane (thickness) approx. 0.79cm
Silver single Habaki
Wooden case (Shirasaya)

Price 700,000 JPY

 赤松太郎兼幸は本名を木村安広といい、昭和五十六年の生まれ。赤松太郎を名乗り(注)とする木村家は人吉藩相良家の御用刀工の流れを汲み、戦前から戦後にかけて鹿児島川内川で採取した砂鉄を用いて自家製鋼に挑戦した祖父兼重‐父兼嗣と続く名流。家伝の清麿伝を手掛け、親子共々赤松太郎の鞴の火を守るべく、日々研鑽を積んでいる。
 この刀は身幅が極めて広く、元先の幅差が殆ど感じられない程に先幅も広く、厚みのある鎬地の中程から先の肉が大胆に削ぎ落され、鋒が大きく延びて鋭利。この造り込みは、遠くは南北朝中期の一時期盛行した、柄に長柄を付して用いた但州法城寺の刀、近くは兵学者窪田清音(くぼたすがね)の教えでこの造り込みを物にした源清麿を想起させる凄絶味のある一振。小板目肌が詰み澄んだ地鉄は地沸が厚く付いて潤う。焼が高い互の目丁子乱の刃文は、花房を想わせる丁子が目立ち、匂口締まりごころとなって明るく、長い匂足が盛んに入り、細かな金線と砂流しが連続して流れて華麗な焼刃構成となる。帽子は焼を充分に残し、鮮やかに乱れ込んで突き上げて長めに返る。茎は製作時そのままに白銀色に輝き、銘字が鑚強く刻されている。父祖の伝統の清麿伝に自身の創意工夫を盛り込んで精鍛された若々しい一刀である。

注…名乗りは、八代市南西部に位置する国道三号線沿の難所「赤松太郎 峠」を乗り越えんとの想いに拠る。