短刀
銘 宇多國久

Tanto
Uda KUNIHISA

越中国 永正頃 約五百十五年前

刃長 九寸三分
内反り僅少
元幅 八分一厘
重ね 一分八厘
金着一重鎺 上製白鞘入
『刀剣通信販売目録』所載

昭和三十一年岡山県登録

特別保存刀剣鑑定書
(時代室町後期)

Ecchu province
Eisho era
(A.D.1504-1520, late Muromachi period)
About 515 years ago

Ha-cho (Edge length) 28.2cm
Slightly curved inward
Moto-haba (width at Ha-machi) approx. 2.45cm
Kasane (thickness) approx. 0.55cm
Gold foil single Habaki
Wooden case (Shirasaya)

Published in "Token tsushin hanbai mokuroku"

Tokubetsu-Hozon certificate by NBTHK
(Late Muromachi period)

 宇多國久は越中国(注①)の刀工。南北朝期の國房の子と伝える左衛門三郎國久には殊に優れた作(注②)がある。時代が降って宝徳、文明、永正、天文、弘治の各代の國久も守護畠山氏など北陸の有力武将の為に作刀している。
 この短刀は永正の國久の作とみられる一口。身幅重ね充分で僅かに内に反って寸が延びた颯爽たる姿。地鉄は板目に杢、刃寄りに柾を交えて強く錬れ、太い地景が入り、つぶらな地沸が厚く付いた中に起ち現れた肌模様は大樹の断面を想わせて美しく、刃寄り黒く澄んで白く沸映りが立ち、総体の鉄色は晴れやか。細直刃の刃文は微かに揺れ、純白の小沸が付いた刃縁は締まってきっぱりと冴え、匂で澄んだ刃中には小足が無数に入る。帽子は焼を充分に残し、突き上げて小丸、長めに返る。保存状態が良好な茎は錆色が落ち着き、飄逸な鑚使いながら入念に刻された「宇多國久」の四字銘に真摯な人柄が滲んでいる。高位の武将の腰間にあった作で、同時代の相州物、備前物は勿論、応永國久にも遜色のない優品(注③)となっている。

注①…『日本刀銘鑑』によれば現在の富山県西砺波郡福岡町三日町字宇多とされる。

注②…応永七(年の字欠)十二月日紀の短刀を含む短刀四口、太刀一口、脇差一口、槍一筋が重要刀剣指定である。

注③…東京美術刀剣商業協同組合が昭和三十三年に発行した『刀剣通信販売目録』に、本作は初代応永か二代宝徳の作で「出来も直刃なれ共宜敷く、鑑賞刀に最適」とある。