山城国 寛文頃 約三百六十年前
刃長 二尺二寸九分五厘
反り 三分五厘
元幅 一寸
先幅 六分八厘
棟重ね 二分四厘
鎬重ね 二分二厘
金着二重ハバキ 白鞘入
昭和二十七年兵庫県登録
特別保存刀剣鑑定書
九十万円(消費税込)
Yamashiro province
Kanbun era(A.D.1661-1672, early Edo period)
About 360 years ago
Ha-cho (Edge length) 69.5cm
Sori (Curvature) approx. 1.06cm
Moto-haba (width at Ha-machi) approx. 3.03cm
Saki-haba (width at Kissaki) approx. 2.06cm
Kasane (thickness) approx. 0.73cm
Gold foil double Habaki
Wooden case (Shirasaya)
Tokubetsu-Hozon certificate by NBTHK
Price 900,000 JPY
父兼道に伴って美濃国より京に移住して栄えた三品伊賀守金道(みしないがのかみきんみち注①)には、来金道、吉道、正俊の三人の弟がいる。吉道は丹波守、正俊は越中守を、そして来金道は文禄四年十二月七日に和泉守を受領した。その二代目来金道は元和二年五月六日に越後守を、さらに三代は正保三年十一月十六日に和泉守を受領し、後に入道して榮泉と名乗り、寛文十二年に法橋となった。
この刀は、和泉守来金道三代の寛文年間の作とみられ、僅かな区送りながら、鎬筋が凛として反り控えめに中鋒延びごころの洗練味のある造り込み。地鉄は小板目肌が詰み澄み、微塵の地沸が均一に付いてしっとりと潤い、断ち割った直後の梨の実の断面を想起させる。相州古作を手本とした刃文は、浅い湾れに尖りごころの刃と箱がかった刃を交えた構成。刃縁に降り積もった新雪のような沸が付き、湯走りと刃中の太い沸筋が眩く輝き、物打辺りには金筋が沸を切り裂くように躍動して覇気に満ち、深々とした微細な沸の粒子が昂然と輝いて刃色の明るい刃中に太い足が入る。帽子は掃き掛けて小丸に返り、棟の処々を焼く。茎は和泉守金道らしく先の尖った栗尻に仕立てられ、一画一画が鮮明で鑚強く太く入念に刻された銘字に鑚枕が立ち、勅許の裏菊紋が誇らしげに刻されている。志津兼氏を見るような堂々の大作(注③)となっている。
注①…家康より日本鍛冶惣匠号を許され、京都御所や二条城近くの西洞院夷川通下がる(毘沙門町)に居住し、朝廷の御用を勤めた。
注②…『銀座情報』四百十五号掲載。
注③…似た作柄の優刀が第二十三回重要刀剣指定。