越後国 安政 百六十四年前
刃長 九寸九分
反り僅少
元幅 一寸三厘
重ね 二分
金着二重ハバキ 白鞘入
昭和四十八年新潟県登録
特別保存刀剣鑑定書
八十万円(消費税込)
Echigo province
Ansei 6(A.D.1859, late Edo period)
164 years ago
Hacho(Edge length) 30cm
A little curvature
Motohaba(Width at ha-machi) approx. 3.12cm
Kasane (Thickness) approx. 0.61cm
Gold foil double Habaki / Shirasaya
Tokubetsu-Hozon by NBTHK
Price 800,000 JPY
玉心斎源正蔭(まさかげ)は姓名を五島鯉介と称し、越中国富山の生まれ。江戸に出て源正雄の門を叩くも、後に師と同じ下谷御徒町に門戸を張る水心子正次にも師事して鍛錬の技術を高め、業成って後は越後高田城下に移住して鍛冶場を定め、幕末動乱の時代の要求に応えている。
この短刀は、ふくらの張った寸延びの、身幅広く武骨な造り込みとする一方で、真の棟に仕立て、茎には化粧鑢を施して栗尻とした、師水心子正次を想わせる瀟洒な仕上げ。刃寄りに柾肌を交えた小板目鍛えの地鉄は地沸が厚く付き、地底に潜む地景で細やかに肌起ち、刃味の良さを窺わせる。刃文は広狭抑揚変化のある互の目乱刃で、帽子は浅く乱れ込んで先端が尖りごころの小丸となって棟寄りに返る師正雄の手癖通りの出来。小沸と匂の調合になる匂口が鮮やかに冴えた焼刃は、押し合うような小互の目の連続に伴って匂足が無数に射す。まさに源正雄と正次両師の秘伝を集成した力作。茎の裏菊紋は、同時代に盛り上がった攘夷、復古の気運を想像させ、この短刀にも並みならぬ強い意思を感じとることができるのである。