摂津国‐武蔵国 貞享頃 約三百四十年前
刃長 一尺二寸七分強
反り 二分三厘
元幅 一寸三分
重ね 二分五厘強
素銅地富岳形高彫金色絵一重ハバキ 白鞘付
朱潤塗鞘脇差拵入
拵全長 二尺六分
柄長 四寸六分
昭和二十六年新潟県登録
特別保存刀剣鑑定書
Settsu province - Musashi province
Jokyo era(A.D.1684-1687, early Edo period)
About 340 years ago
Hacho(Edge length) 38.6cm
Sori(Curvature)approx. 0.7cm
Moto-haba(Width at Kissaki) approx. 3.94cm
Kasane (Thickness) approx. 0.76cm
Gold foil double Habaki / Shirasaya
Shu urumi nuri saya,wakizashi koshirae
Whole length approx. 62.4cm
Hilt length approx. 14cm
Tokubetsu-Hozon by NBTHK
力士の腰間の備えとされた、極めて身幅が広く重ねの厚い、二代宗重の脇差。宗重初代は越前守助廣に学んでその協力者となった宗兵衛宗重で、その技術を受け継ぎ、さらに緻密に詰んだ地鉄鍛えと覇気ある焼刃を生み出し、『新刃銘盡後集』でも高く評価されたのが、この三郎右衛門宗重。後に江戸に手も打つ。
一尺三寸に近い寸法だが、巨漢の力士にとっては短刀ほどの感覚。物打辺りの身幅も広くふくらが張り、重ねが厚く、先反りが付いて陰影は三日月。研ぎ減りも少なく、健全な姿形を保っている。ゆったりと流れる川面を想わせる柾目鍛えの地鉄は総体に良く詰み、地景が現れた肌目に沿って地沸が付き、沸映り状に濃淡変化して躍動的な景色を展開。焼幅に高低変化のある互の目乱の刃文は、腰開き互の目、尖りごころの刃、箱がかった刃を交え、焼頭に沸が付いて湯走り状に地に流れ込んで焼頭が乱れ、あたかも川辺に反射する陽光を想わせる風合い。沸深い焼刃は匂口が明るく、匂で透明な刃中に淡い沸足が射し、帽子は沸付いて乱れ込み、先端が掃き掛けて浅く返る。
附されている拵は、刀身に合わせて頑強な印象。霞状に叢のある朱漆塗鞘に鉄鐔を掛け、大小柄を備えた骨太な造り込みとされている。装着されているハバキも、日本一を意味する富嶽を彫り表わしている。大名家に抱えられて力自慢を誇った力士の姿が彷彿とされよう。