冠落造短刀
銘 [備][州]長舩住長守
永和四年三月日
Kanmuri-otoshi tanto
[Bi][shu]Osafune ju NAGAMORI
Eiwa 4 nen 3 gatsujitsu

備前国 南北朝後期永和 六百四十六年前

刃長 八寸五厘
反り僅少
元幅 七分八厘
重ね 一分五厘
彫刻 表裏 腰樋
金着一重ハバキ 白鞘・桐箱付

佐藤寒山博士箱書(注①)
本間薫山博士鞘書
『鑑刀日々抄』・『刀剣美術』四百十三号所載

昭和二十七年兵庫県登録

朱漆塗鞘合口短刀拵入
 拵全長 一尺三寸五分
 柄長 三寸七分六厘

特別保存刀剣鑑定書
百六十万円(消費税込)

Bizen province
Eiwa 4(A.D.1378, late Nanboku-cho period
646 years ago

Hacho(Edge length) 24.4cm
A little curvature
Moto-haba(Width at ha-machi) approx. 2.36cm
Kasane (Thickness) approx. 0.45cm
Engraving: "Koshi-hi" on the both sides

Gold foil single Habaki
 Calligraphy on the Shirasaya,
written by Dr. Honma Kunzan
 Calligraphy on the Kiri box,written by Dr.Sato Kanzan

Published in "Kanto hibi no sho"
and "Token bijutsu" the 430 issue

Tokubetsu-Hozon by NBTHK
Price 1,600,000 JPY

 長舩長守(ながもり)の出来優れた短刀。長守は南北朝期の備前の刀工。『日本刀銘鑑』によれば、貞和、文和、正平、延文、貞治、建徳の年紀のある工と、応安、永和、至徳、嘉慶、康応の年紀のある工がいることから初二代に別けているが、銘形は一貫しており、一代とみるのが妥当であろう(注②)。即ち活躍期が相伝備前の長義とほぼ重なり、長守は長義の一族で、有力な作刀協力者の一人と考えられる。作域は長義に見紛う奔放な乱刃から端正な直刃まであって(注③)広いが、経眼する在銘作は稀である。
 この短刀は小振りに引き締まった、南北朝後期の典型的な姿。小板目に流れ柾を交えた地鉄は地景が密に入って刃寄りに澄んだ暗帯部のある映りが起ち、微塵に付いた地沸が輝いて白く霞立つ温潤味のある美しい肌合いとなる。直刃調の刃文は、新雪のような沸で刃縁の光が強く、湯走り、小形の金線、砂流しが掛かり、処々大きく喰い違う。帽子は焼を充分に残して小丸に、長めに返る。沸強く奔放な変化は長義に通じ、また仕上がりも上々。銘字は細鑚で神妙に刻され、長守の字癖が顕著(注④)である。
 色鮮やかな朱鞘の拵は近代製作の極上品で、金粉溜塗の角所と鞘口、柄の自然な立鼓と細部に至るまで完璧。初夏の薫風を感じさせる藤図金無垢目貫と藤棚図小柄で装われ、「長守(ながきまもり)」の銘字と魔除の朱に多幸を祈る真心(注⑤)が滲んでいる。

注①…保管用桐箱に「此作現存稀也 朱塗合口拵付也」と、佐藤寒山博士の箱書がある。

注②…藤代版『日本刀工辞典古刀篇』には「作品嘉慶に至る三十五年間」(文和から嘉慶までの三十五年であろう)とあり、初二代に別けず一代説である。

注③…正平十六年二月日紀の沸出来の大互の目乱刃の作(第六回特別重要刀剣)、同年三月日紀の冠落造の直刃出来の短刀(第三十三回重要刀剣)がある。

注④…長の第五画は横長に、舩の公の第一画は左から右に水平に刻され、長守の癖が現れている。なお年の最終画が撥ねるのは長義と同じである。

注⑤…本作は山形の愛刀家の家に守刀として長くあった品で、保管用の特製桐箱も附されている。