短刀
銘 平安城住刻圀(信濃大掾忠国前銘)
(業物)
Tanto
Heianjo ju TOKIKUNI
(The same person as Shinano daijo Tadakuni)
(Wazamono)

山城国‐因幡国 元和頃 約四百十年前

刃長 九寸四分
反り僅少
元幅 八分八厘
棟重ね 二分六厘半
鎬重ね 二分六厘
彫刻 表 棒樋掻流し
金着二重ハバキ 白鞘入

昭和四十六年千葉県登録

特別保存刀剣鑑定書
(初代信濃大掾忠国前銘)

Yamashiro province
 -Inaba province
Genna era(A.D.1615-1623, early Edo period
About 410 years ago

Hacho(Edge length) 28.5cm
A little curvature
Moto-haba(Width at Ha-machi)approx.2.66cm
Kasane (Thickness) approx. 0.79cm
Engraving:"Bo-hi" kaki-nagashi on the both sides

Gold foil double Habaki / Shirasaya

Tokubetsu-Hozon by NBTHK
(previous name of Shinano daijo Tadakuni)

 因幡国鳥取藩工信濃大掾忠国は、京堀川國廣の高弟出羽大掾國路の門人。『古今鍛冶備考』に拠れば、初め「”国”勝と打ち中頃刻”国”に改め」とあり、国勝から刻国(ときくに)に改銘したとされていた。ところが近年「正 藤原朝臣”圀”勝」と刻銘された刀が発見され(注)、初銘は国勝ではなく圀勝と判明。更に表題の短刀は刻国ではなく「刻圀」であり、圀勝‐刻圀‐刻国‐忠国と改銘された事がわかる。
 この短刀は、差表を平造にし、差裏の棟よりに鎬筋を立てた特異な造り込みで、元先の重ねを頗る厚く、反りを浅く仕立ててふくらを枯らせ、刺突と截断両方に適応させた恐るべき構造。板目鍛えの地鉄は、差表の刃寄りに柾を配し、差裏には杢目を交えて強く錬れ、小粒の地沸が厚く付いて沸映りが立つ中に地景が働く、弾力味と活力に満ちた出羽大掾國路宛らの肌合い。腰刃風の焼き込みから始まる中直刃の刃文は、純白の小沸で刃縁の光が強く、刃境に小形の湯走りと金線が微かに掛かり、刃中も匂で明るく冴える。帽子は焼が深く、横に展開して浅く返る。茎は國路と同様に先細く尖った栗尻で、飄逸味のある銘字が刻されている。小品ながら出来の優れた、刀工の未知の事実を伝える貴重な新資料である。

注…飯田俊久先生「資料紹介 審査の現場から 信濃大掾忠国の初期作と目される国勝の刀」(『刀剣美術』五四八号)参照。