刀身
宮入恵(小左衛門行平) 無鑑査刀匠
長野県坂城町
刀身彫刻
柳村宗寿 岡山県岡山市
刃長 八寸四分五厘
反り 六厘半
元幅 一寸三分強
重ね 二分二厘強
上蓋紗綾形文下蓋赤銅二重ハバキ 白鞘入
平成七年新作刀展覧会優秀賞受賞作
『柳村仙壽 平成の刀身彫刻』所載
『刀身彫刻の精華』所載
平成七年長野県登録
百三十五万円(消費税込)
Forged by Miyairi Kei(Kozaemon Yukihira)
”Mukansa"by NBTHK
Sakaki city, Nagano prefecture
Engraved by Yanagimura Soju
Okayama prefecture
About 360 years ago
Hacho(Edge length) 25.6cm
Sori(Curvature)approx.0.2cm
Moto-haba(Width at Ha-machi) approx. 3.94cm
Kasane (Thickness) approx. 0.65cm
"Sayakata"patterned(on the top)
with gold plating double Habaki,
which was made of Shakudo
Shirasaya
"Yushu" prize winning work by NBTHK in 1995
Price 1,350,000 JPY
宮入恵刀匠は、人間国宝に指定された宮入行平師の子で、昭和三十二年の生まれ。昭和五十二年に行平師に入門するも、師がその年に急逝したため、以降の指導は同門の藤安将平刀匠から受ける。専ら相州古伝の再現に取り組み、沸を強く意識した激しい乱れ出来を生み出して人気が高く、新作刀展覧会では寒山賞、毎日新聞社賞、高松宮賞など数々の特賞を受賞して平成十二年に無鑑査刀匠に認定されている。また、平成八年には父が用いた行平の銘を襲い、小左衛門行平と改めている。作刀だけでなく他分野の芸術家との交流もあり、文化活動の広い刀工の一人である。
刀身彫刻の柳村宗壽師は、古典的這龍や不動明王だけでなく新趣の図案を古風に表現して刀身彫刻の名人と謳われた柳村仙壽師の子で、昭和四十六年の生まれ。幼い頃から父の作業に接し、その総てを受け継ぎ、また新たな作風を模索している。新作刀展覧会では優秀賞や会長賞などの特賞を連続受賞している、未来を担う優工である。
この短刀は、遍く知られる庖丁正宗を写した幅広肉厚の刀身に、雲上から下界を睨む風神の姿を宗寿師が肉彫表現した作。小板目に板目を交えた地鉄は全面に細かな地沸が付いて明るく冴え、その表面に板目に沿って地景が入り組み縮緬状に複雑に揺れる肌合いとなる。刃文は浅い湾れに小互の目を交え、抑揚変化がついて帽子へと連なり、先わずかに乱れて返る。明るく冴えた匂に小沸の絡んだ焼刃は、板目肌に伴ってほつれ掛かり、刃中では鋭く長い金線に変じ、ほつれ、小足と共に躍動的で、風神の背後に立ち上った竜巻の如き景観。金線は稲妻。風神の脇に立つ湯走りも凄みがある。目を見開き口を大きく開き、背負った風袋を今にも地上めがけて放たんとする風神の図は宗寿師の独創。彫口深く覇気に溢れている。
平成八年には、本作と連続する雷神図短刀が、同じ小左衛門行平刀匠と宗壽師の彫刻で製作され、新作刀展覧会で優秀賞を受賞している(注)。
注…銀座長州屋所蔵。