土佐山内家伝来の、復古式大鎧。兜は練革を接ぎ合せて百二十間とした緩やかな丸みが美しい筋兜。光沢のある黒漆塗によって筋が起ち、目深に装着された丸みのある眉庇へと構成線が連なる。大振りの吹返しには赤銅地高彫仕立ての山内家定紋が存在感を示している。枝菊が片切彫された天辺座は金色絵仕立てで鮮やか。前立は金粉塗の日輪。鉄地黒漆塗仕上げの饅頭形三段錣が萌黄色絲で素懸縅とされている。彫の深い黒漆塗の烈勢面には、蝙蝠仕立ての二段垂が装着されている。壺板が設けられた胴は黒漆塗本小札萌黄色絲縅。首を守る障子板は肩上に鋭く立ち、鳩尾板、栴檀板も古式を良く再現しており、金色絵仕上げの定紋が備えられ、胸元にあって貫禄のある景色となっている。左右の肩を防御する大袖も風格があり、金具はいずれも枝菊透し金色絵仕上げで、要所に鮮やかな印象を与える装飾となっている。籠手は強く立った菱筏鉄を間鎖で繋いだ厳めしい造り込みの七本篠籠手。総体の家地は緑色地に五爪の龍図。画革の牡丹獅子も古式に則った意匠。佩楯は篠刻を設けた筏鉄の紺糸縅。籠手の肩と三本篠の臑当に「明珍宗晴」の銘が年紀と共に刻されている。土佐明珎派の宗晴は高知に居住して山内家に仕えた甲冑師。この大鎧は天保八年の年紀から、土佐藩二十四万石山内家第十二代当主、山内豊資の命による作であろう。
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