銘 筑州山王住宗勉作 平成六年二月吉日
Katana: Chikushu San no ju So Munehiro saku

 

宗勉 福岡市 無鑑査刀匠
平成 六十七歳作
刃長 二尺五寸九分七厘(七八・七糎)
反り 三分三厘
元幅 一寸一分五厘
先幅 八分七厘
棟重ね 二分五厘
鎬重ね 二分六厘
金着二重鎺
白鞘入 平成六年福岡県登録

特別保存刀剣鑑定書

So Tsutomu Fukuoka City, Japan 
Heisei 67 years old
Edge length : 2 shaku 5 sun 9 bu 7 rin (78.7cm)
Curvature : Approx. 1cm
Moto-haba (width at Ha-machi) approx. 3.48cm
Width at Kissaki : Approx. 2.64cm
Thickness at mune : 7.6mm,
Thickness at shinogi-line : 7.9mm
Wooden case (Shirasaya)

Tokubetsu-Hozon certificate by NBTHK

 宗(そう)勉(つとむ)刀匠は昭和二年五月一日鹿児島県出水郡高尾野町の生まれ。昭和五十三年、研師で鑑定家の池田末松師の勧めで大坂新刀の横綱津田助廣の濤瀾乱刃に挑戦、研究精進の結果昭和五十六年に文化庁長官賞に輝く。平成二年に高松宮賞を受賞して無鑑査となった際の受賞の言葉で、鋼に潜む地鉄の美、魅力を追求して同質の素材を以て入魂の鍛錬と焼入れを施しても結果は常に異なるが、それが難しくも面白い所であると述べ、一期一刀の境地を明らかにしている。  この刀は、手本とした津田助廣(すけひろ)に紛れる濤瀾(とうらん)乱(みだれ)刃が冴えた二尺六寸の大作。身幅広く重ね厚く両区深く、反りを控えて中鋒延びごころの、力強くしかも洗練味のある姿。地鉄は詰み澄んだ小板目肌の地底に細かな地景が働いて緻密に肌起ち、小粒の地沸が均一に付いて潤い、一段と晴れやかな鉄色(かないろ)。刃文は長い焼き出しから始まる大互の目乱刃。二つ三つ四つと連なった焼の高い互の目は、傾斜がついて片男波のようになり、波飛沫を想わせる丸い玉刃(たまば)を交えて抑揚変化し、寄せる波と返す波のように、まさに津田助廣の濤瀾乱刃を連想させる構成。刃縁に付いた明るい沸が足となり、刃中の匂と相俟って昂然と輝き、抜群に冴えた焼刃となる。帽子は小丸返り。製作時そのままの白銀色に輝く茎は助廣と同じく香(こう)包(づつみ)鑢(やすり)が掛けられ、銘字が太鑚で堂々と刻されている。助廣の塁を磨すような、宗勉刀匠の傑作刀である。