脇差
銘 (菊紋)近江守源久道
Wakizashi
[Kiku-mon] Omi no kami HISAMICHI

山城国 天和頃 約三百四十年前
刃長 一尺九寸七分
反り 六分
元幅 一寸八分
先幅 七分六厘
棟重ね 二分六厘
鎬重ね 二分三厘
金色絵二重ハバキ 白鞘入
昭和四十三年三重県登録

特別保存刀剣鑑定書
六十五万円(消費税込)

Yamashiro province
Tenna era(A.D.1681-1683, ealy Edo period)
About 340 years ago

Ha-cho (Edge length) 59.7cm
Sori (Curvature) approx. 1.82cm
Moto-haba (width at Ha-machi) approx. 3.3cm
Saki-haba (width at Kissaki) approx. 2.3cm
Kasane (thickness) approx. 0.79cm
Gold plating double Habaki
Wooden case (Shirasaya)

Tokubetsu-Hozon certificate by NBTHK
Price 650,000 JPY

 近江守久道初代は名を堀六郎兵衛といい、寛永四年近江国野洲郡野村の産。京都の伊賀守金道の一族和泉守金道に師事し、優れた技術を認められて寛文二年に近江守の受領を許され、京毘沙門町に師和泉守来金道、伊賀守金道、丹波守吉道、越中守正俊などの三品(みしな)一門と軒を連ねて一家を構えた。覇気横溢の乱刃を得意とし、『新刀辨疑』巻四では「古風得實の鍛冶」と賞されている。
 この脇差も、焼の高い奔放華麗な乱刃に久道の特色が顕著な一振。素早い抜刀を剣術の流儀とした武士の需であろう、二尺を僅かに切る長さに造られ、身幅広く重ね厚く鎬筋が張り、反りやや高く中鋒の張りのある姿。小板目鍛えの地鉄は鉄色明るく、粒立った地沸が厚く付いて淡い沸映りが立つ。沸と匂の調合になる刃文は、箱がかった刃に連れた互の目、尖りごころの刃を交えて多彩に変化し、銀砂のような沸で刃縁が明るく、太く入った沸足を遮るように金線と砂流しが幾重にも掛かって層をなす、遠くは志津兼氏、近くは丹波守吉道を想わせる激しい焼刃構成。浅く弛んで先が尖って返る帽子も三品一門らしい出来。茎の保存状態は完璧で錆味も良く、茎尻は刃方に強く上がる久道独特の形で、鑚太く謹直に刻された菊紋と銘字も鮮明。師伝の三品流を基本に久道の創意が加味された、二尺を切る寸法を感じさせない、見応え充分の一振に仕上がっている。