肥前国 寛永二十年頃
約三百八十年前
刃長 二尺四寸八分一厘
反り 五分二厘
元幅 一寸四厘
先幅 六分六厘
重ね 二分三厘
金着二重ハバキ 白鞘入
平成十九年愛媛県登録
特別保存刀剣鑑定書
Hizen province
Kan'ei 20 (A.D.1643, early Edo period)
About 380 years ago
Ha-cho (Edge length) 75.2cm
Sori (Curvature) approx. 1.58cm
Moto-haba (width at Ha-machi) approx. 3.15cm
Saki-haba (width at Kissaki) approx. 2cm
Kasane (thickness) approx. 0.7cm
Gold foil double Habaki
Wooden case (Shirasaya)
Tokubetsu-Hozon certificate by NBTHK
近江大掾忠廣は五字忠吉こと肥前國忠吉初代(武蔵大掾忠廣)の子。寛永九年に十九才で家督を継ぎ、佐賀藩主鍋島侯に仕えた。近江大掾の受領は寛永十八年七月二十二日。受領の前、そして受領した後間もない若い頃には、忠吉家の次代を担うべく想いを込めたものであろう、豊かな感性に努力が積み重ねられて溌剌とした作が多い。
表題の刀は、銘字の特色から近江大掾受領二年後の寛永二十年三十才の作。まず目を惹くのは姿の良さ。身幅広く重ね厚く、反りがやや高く寸法も延びて中鋒に造り込まれた、宛ら太刀を想わせる好姿は、まさに肥前忠廣の真骨頂。地鉄は鎬地が細かな柾に、平地が小板目肌に錬り鍛えられ、小粒の地沸が厚く付いた中を地景が縦横に走って活力に満ち、精美で瑞々しい質感を呈す。端正な直刃の刃文は、白雪のような沸の粒子が刃縁に厚く付いて輝き、盛んに入った飛足が連なって沸筋状に刃境を流れて二重刃ごころを呈し、刃中には微細な沸匂の粒子が溢れて水色に澄む。帽子は肥前刀らしい端正な小丸返り。茎の保存状態は万全で、太鑚で堂々と刻された銘字は鮮やか。鍋島侯の指示で鎌倉時代の来國光を念頭に精鍛された作であろうか、子細に観察すると山城来物の「京逆足」の如く足の一部が茎方に射している。直刃の妙趣が存分に堪能できる、出来の優れた一刀となっている。