短刀
銘 備州長舩清光
永禄九年八月日

Tanto
Bishu Osafune KIYOMITSU
Eiroku 9 nen 8 gatsujitsu

備前国 永禄 四百五十七年前
刃長 八寸一分一厘
元幅 七分六厘
重ね 二分四厘
金色絵一重ハバキ 白鞘付

黒石目地塗鞘小さ刀拵入
 拵全長 一尺二寸六分
 柄長 三寸強

昭和二十六年東京都登録

保存刀剣鑑定書
五十万円(消費税込)

Bizen province
Eiroku 9(A.D.1566, late Muromachi period)
458 years ago

Ha-cho (Edge length) 24.6cm
Moto-haba (width at Ha-machi) approx. 2.3cm
Kasane (thickness) approx. 0.73cm
Gold plating single Habaki
Wooden case (Shirasaya)

Kuro ishimeji nuri saya, chisa-gatana koshirae
 Whole length: approx. 38.2cm
 Hilt length: approx. 10cm

Hozon certificate by NBTHK
Price 500,000 JPY

 長船清光家は、祐定家が与三左衛門尉祐定や源兵衛尉祐定を筆頭に優工を擁していたように、天文頃には五郎左衛門尉清光を、永禄から天正には孫右衛門尉清光を棟梁として腕利きの刀工を擁し、播磨龍野城主で赤松政則(注)の血を引いた赤松政秀や、赤松家の旧重臣で戦国武将となった備前天神山城主浦上宗景等、山陽道の有力武将とその旗下の武士の為に鍛刀しており、実用刀のみならず美観にも考慮された優品の数々を遺している。
 表題の短刀も孫右衛門尉清光一門の刀工が戦国武将の需で精鍛した一口。姿は鋭利にして重ね厚手に反りがなく、短い茎が掌に程よく収まり、敵との組打の際の操作性の良さは明らか。板目に杢、流れごころの肌を交えた地鉄は刃寄りが澄み、刃区から立ち昇った霧のような映りは濃淡異なる地沸と杢肌に感応してゆらゆらと乱れた風情で、地肌の味わいも格別。清光が得意とした広直刃は、小沸が付いて匂口きっぱりと明るく、微かにほつれ掛かり、物打からふくら付近は一段と焼強く、湯走り、喰い違い刃を交えて激しく乱れ、そのまま鋒に乱れ込み、横に展開して僅かに返る。丁寧に刻された孫右衛門尉清光に近似する銘字には鑚枕が立つ。戦国の実戦武器の実情を伝えて貴重である。
 能面図目貫を巻き込んだ柄に、質実な黒石目地塗鞘の拵に収められている。

注…備前・播磨・美作の守護。右京亮勝光・左京進宗光の雇い主。宗光 を師に鍛刀し作を遺している。