備前国 永享頃 約五百八十年前
刃長 一尺六寸三分五厘
反り 三分
元幅 九分二厘
先幅 六分四厘
棟重ね 一分九厘
鎬重ね 一分八厘
彫刻 表裏 棒樋丸止
金着一重ハバキ 白鞘入
昭和二十六年岐阜県登録
特別保存刀剣鑑定書(長舩)
Bizen province
Eikyo era(A.D.1429-1440, early Muromachi period)
About 580 years ago
Ha-cho (Edge length) 49.5cm
Sori (Curvature) approx. 0.91cm
Moto-haba (width at Ha-machi) approx. 2.79cm
Saki-haba (width at Kissaki) approx. 1.94cm
Kasane (thickness) approx. 0.55cm
Engraving: "Bo-hi" maru-dome on the both sides
Gold foil single Habaki
Wooden case (Shirasaya)
Tokubetsu-Hozon certificate by NBTHK(Osafune)
長舩経家は室町初期の永享頃を主活躍期とし、有力守護大名赤松氏の庇護を受けた盛光、康光、家助等と共に、一文字や長舩光忠、長光など鎌倉期の名工に倣って作刀に励み、加賀前田家の支藩大聖寺家伝来の二字銘の太刀(重要美術品)等をはじめとする優品の数々を遺した、永享備前を代表する名流。応永備前の作風を受け継いで良く詰んだ地鉄に覇気が溢れ、片手での操作性を追求した実戦的造り込みとしている。
この脇差は身幅広く重ね厚く棒樋が掻かれ、腰反りの付いた中鋒の太刀のように凛と引き締まった姿。地鉄は杢目主調の板目肌に地景が太く密に入り、樹木の年輪を想わせる肌模様が顕著に現れるも殊に鍛着面が詰み、小粒の地沸が厚く付き、乱れ映りが焼刃に迫って現れるなど盛光同然の応永杢の美しさ。刃文は腰開きごころの互の目乱刃に小丁子、小互の目、片落ち風の刃を交えて起伏があり、小沸付いて刃縁締まりごころに明るく、焼の谷に入った足を遮るように細かな金線と淡い砂流しが掛かり、刃中は匂が充満して霞立つように澄む。帽子は乱れ込んで先端尖り、蝋燭の芯の形となって浅く返る。茎は殆ど生ぶで、小さな二字銘の味わい深さも格別。尾張の名家に伝わった逸品である。
注…鎌倉期の畠田守家の子の経家に始まり、南北朝時代の応安年紀のある経家、応永の弥太郎経家、そして本作の永享経家、文明経家、永正経家と続いている(『日本刀銘鑑』)。