肥前国 元禄頃 約三百三十年前
刃長 二尺三寸八分
反り 六分
元幅 一寸一分
先幅 八分一厘
棟重ね 二分
鎬重ね 二分二厘半
彫刻 表裏棒樋丸止
金着二重ハバキ 白鞘入
昭和二十七年神奈川県登録
特別保存刀剣鑑定書
Hizen province
Genroku era(A.D.1688-1703, mid Edo period)
About 330 years ago
Ha-cho (Edge length) 72.1cm
Sori (Curvature) approx. 1.82cm
Moto-haba (width at Ha-machi) approx. 3.33cm
Saki-haba (width at Kissaki) approx. 2.45cm
Kasane (thickness) approx. 0.68cm
Engraving:"Bo-hi" maru-dome on the both sides
Gold foil double Habaki
Wooden case (Shirasaya)
Tokubetsu-Hozon certificate by NBTHK
忠吉家四代目の近江大掾忠吉は、陸奥守忠吉の嫡子にして通称新三郎。貞享三年十九歳の時に父が没したため、祖父近江大掾忠廣より技術を学び、その作刀協力に従事して忠吉家正統の鍛法を習得、元禄十三年三月に三十三歳で近江大掾を受領。以降は八十歳に至るまで作刀姿勢を変えることなく、家伝を全うしている。
南北朝時代の備前刀を手本としたこの刀は、受領間もない三十代の進取の気概旺盛なりし頃の作と鑑せられ、寸法長めに身幅広く雄大な印象が強く、中間反りも深く姿形が優れ、棒樋が掻かれて精悍さを感じさせる造り込み。家伝の小糠肌と呼ばれる地鉄鍛えは、小板目肌が常よりも一段と清く詰み、細やかな地沸で覆われて梨子地風に潤い感に満ち、地底には小形の地形が網状に働いて力強く、しかも地肌に透明感が窺える。焼の高い互の目乱の刃文は、逆ごころの小丁子、尖りごころの刃が複式に焼かれて高低変化に富み、常の直刃調の土取りに盛んに長い足が配された出来とは趣を異にする大胆な構成。小沸強く匂口が締まって明るい焼刃は、刃中に長短の足と飛足、葉が頻りに入って一際華麗。小互の目の中に葉が配された虻の目状の刃も所々に窺える。帽子は泰然自若の趣のある弛みごころの小丸返り。手入れが行き届いたものであろうか、錆込みの少ない茎には父祖を想わせる謹直な銘が刻されている。