大小拵入刀 黒蝋色塗鞘大小拵
下り藤に桔梗紋図総金具 銘 泉秀壽(花押)
刀 銘 武州住石堂秦東蓮 (業物)
脇差 無銘 藤原高田

Kuro roiro nuri saya,Dai Sho koshirae
"Sagari fuji ni Kikyo" family crest fittings:
Sig. Izumi Hidetoshi[Kao]
Katana: Bushu ju Ishido Hata TOREN(Wazamono)
Wakizashi: no sign TAKADA

総金具 武蔵国江戸 江戸後期 赤銅魚子地高彫色絵

大刀 武蔵国 寛文頃 約三百六十年前
 刃長 三分三厘
 反り 五分
 元幅 一寸一分二厘
 先幅 七分二厘
 棟重ね 二分三厘
 鎬重ね 二分五厘
 彫刻 表裏 棒樋丸止
 金着二重ハバキ 白鞘付
 拵全長 三尺四寸六分 柄長 八寸八分

脇差 豊後国 元禄頃 約三百三十年前
 刃長 一尺六寸八分六厘
 反り 五分九厘
 元幅 一寸七厘
 先幅 八分四厘
 棟重ね 一分六厘半
 鎬重ね 二分四厘半
 金着二重ハバキ 白鞘付
 拵全長 二尺四寸二分 柄長 六寸強

昭和三十六年東京都登録(大小連番)

刀 特別保存刀剣鑑定書
脇差 保存刀剣鑑定書(藤原高田)
特別保存刀装鑑定書

"Sagari fuji ni Kikyo"family crest fittings:
 Edo city, Musashi province / Late Edo period
 Made of Shakudo

Dai(Large):Hata TOREN
Musashi province, Kanbun era(A.D.1661-1672,early Edo period)
about 360 years ago
 Ha-cho (Edge length) 71.5cm
 Sori (Curvature) approx. 1cm
  Moto-haba (width at Ha-machi) approx. 3.39m
 Saki-haba (width at Kissaki)approx. 2.18cm
 Kasane (thickness) approx. 0.76cm
 Engraving:"Bo-hi" madu-dome on the both sides
 Gold foil double Habaki
 Wooden case (Shirasaya)
 Koshirae whole length: approx.104.8cm
 Hilt length: approx. 26.7cm

Sho(Small):no sign TAKADA
Bungo province, Genroku era(A.D.1688-1703,mid Edo period)
about 330 years ago
 Ha-cho (Edge length) 51.1cm
 Sori (Curvature) approx. 1.79cm
  Moto-haba (width at Ha-machi) approx. 3.24m
 Saki-haba (width at Kissaki)approx. 2.55cm
 Kasane (thickness) approx. 0.74cm
 Gold foil double Habaki
 Wooden case (Shirasaya)
 Koshirae whole length: approx.73.3cm
 Hilt length: approx. 18.2cm

Tokubetsu-Hozon certificate by NBTHK(Katana)
Hozon (Wakizashi:Fujiwara Takada)
Hozon (Koshirae)

 赤銅魚子地に鮮やかな金色絵の下り藤桔梗紋図目貫、縁頭、小柄、笄の揃金具で装われた式正の大小拵。収められているのは、江戸石堂派の中でも備前の古作一文字に紛れる作品を遺した東蓮守久(とうれんもりひさ)の刀と、江戸中期の豊後刀工の手になるがっちりとした脇差。
  黒蝋色塗の鞘は時を重ね、古くから蝋色と呼ばれるしっとりとした潤い感のある色合いを呈し、鉄漿色(おはぐろいろ)と呼ばれる赤味を帯びた黒の柄糸とも調和している。粒の揃った鮫皮に据えられた目貫は、菱巻の隙間に鮮やかに映える。総金具の魚子地は青みを帯びた光沢を呈する上質の赤銅地で、粒が綺麗に揃って傷みなく、いずれの紋所も鮮やかに際立ち、殊に黒と金の色合いの妙味が示されている。作者の泉秀壽は、大森英秀と秀知に学んで鳥獣図などの精密な高彫を得意とした名工。頭シトドメの風格ある仕立ても見どころ。これに、色合い黒々とした鉄地に波間の蛇籠を動感豊かな高肉彫金象嵌とした大小鐔が掛けられている。
  江戸石堂派の東蓮守久は八左衛門と称し、美濃の出身。慶安元年から承応三年までの年紀作を遺しており、後に入道して東蓮と改銘している。殊に切れ味が鋭く、山田浅右衛門による業物作者以上の性能と高い信頼を得ていた刀工である。
  この刀は、身幅が広く重ねが厚く反りを控えた姿で、深い樋を掻いて重量を調整しながらもがっしりとして重量を感じる造り込み。小板目鍛えの地鉄は、流れ肌を交えて詰み、微細な地沸が付いて刃文を映したような乱映りが鮮明に立つ。刃文は、表が複雑に焼かれた重花丁子、裏が小互の目丁子で、いずれも東蓮の特徴的な小模様ながら出入りの活発な構成。匂口の締まった焼刃は冴え冴えとして明るく、匂が起ち込めて透明感のある刃中には小足が無数に入り、飛足が入り、葉が連なって舞い、殊に差表の物打辺りは焼頭が茶花の蕾のように丸みを帯びて一際華やか。焼刃の縁には暗帯部が連なり、焼頭から刃文を映したような丁子映りに煙り込む働きも鮮明。焼の深い帽子は浅く乱れ込んで返る。
 磨り上げて無銘とされた藤原高田(注)極めの脇差は、反りが深く身幅が広くがっちりとした造り込み。良く詰んだ小杢を交えた小板目鍛えの地鉄は、微細な地沸が付いて涼やかな肌合いを呈す。刃文は浅い湾れに、地に深く突き入るような互の目を焼き、崩れ落ちる波頭に水飛沫を想わせる飛焼を配して大海原を表現した構成。匂口が締まって明るい焼刃は清浄感に満ちている。帽子は弛み込んで先掃き掛けて返り、浅い棟焼に連なる(注)。

注…暴鍛(さらしきたえ)で知られる大和守忠行の作であろう。