刀 短刀 生ぶ茎無銘 則重
Tanto no sign (Ubu-nakago): NORISHIGE

越中国 鎌倉後期元亨 約七百年前

刃長 五寸九分五厘
内反り
元幅 五分六厘
重ね 一分四厘強

金着二重ハバキ 白鞘付

黒蝋色塗鞘合口短刀拵入
拵全長 一尺二分
柄長 二寸七分五厘



重要刀剣 (則重)

六百五十万円(消費税込)

令和二年東京都登録

重要刀剣(則重)

Ecchu province Genko era (A.D.1321-1324, late Kamakura period)
About 700 years ago
Hacho (Edge length) 18㎝
Curved inward (Uchi-zori)
Moto-haba (Width at Hamachi) approx. 1.7cm
Kasane (Thickenss) approx. 0.42㎝
Gold foil double Habaki / Shirasaya
Kuro ro-iro nuri saya, aikuchi tanto koshirae
Whole length: approx.30.9cm
Hilt length: approx.8.33cm
Price 6,500,000 JPY

Juyo by NBTHK
(Norishige)

 松皮肌と呼ばれる独特の地鉄に沸の強い刃文を焼くことで遍く知られる則重は、越中国婦負郡呉服に居住した刀工。江戸時代には沸の強い焼刃構成から相州正宗の門人と捉えられていたが、正宗を超える沸の変化と合わせ鍛えによる地鉄の工夫において、さらに延慶、正和の年紀作があることからも、現在では正宗とは同時代あるいはわずかに遡る新藤五國光同門の工であると考えられている。遺されている在銘作は、天童藩織田家伝来の太刀と藤島神社蔵の太刀があるも、他は短刀で、多くが小振りの内反り構造とされている(注①)。 則重の標本的な造り込みからなるこの短刀(注②)は、棟を真に仕立て、寸法を控えた内反り(筍反り)の姿とし、重ね薄めに物打辺りが削がれて一段と鋭く、舟底形ながら振袖に仕立てられた茎も古調で床しく、師伝と時代を鮮明にしている作。硬軟質の異なる鋼を組み合わせた地鉄は、良く鍛えられて均質に詰んだ小板目肌に地景を伴う板目と杢目が交じり、厚く付いた地沸によって肌目が強く浮かび上がり常にない上質な松皮肌となる。刃文は焼の深いゆったりとした湾れで、帽子は穏やかな火炎状に揺れて掃き掛け、ごくわずかに返り、棟を区際まで浅く焼く。沸匂の深々とした焼刃は明るく輝き、刃境には淡い湯走りが働いてほつれ掛かり、長い金筋が地刃の境を超えて黒く光り、刃先近くまで広がる沸匂の中にもこれを切るように金線が走る。 漆黒の漆で仕上げた鞘と鮫革着せの柄に、金の五三桐紋が映えた壺笠形の目貫と、葵紋康継の小刀穂付き樋定規に桐紋図小柄を備えとした、引き締まった拵が附されている。 注①…天童藩織田家伝来の太刀は重文指定。短刀では国宝一口、重文三口、重美八口が指定。 注②…富山県の地元の古老によると、本作は、富山藩前田家伝来で豊公拝領と伝え、則重の銘と元亨二年二月日の年紀があった。