榎本貞義(竜義同人) 静岡県長泉町
昭和五十四年 二十八歳作
刃長 二尺四寸六分八厘
反り 七分二厘
元幅 一寸一分五厘
先幅 九分二厘
棟重ね 二分四厘
鎬重ね 二分六厘
彫刻 表裏 棒樋掻通し
金着二重ハバキ 白鞘入
昭和五十四年静岡県登録
Swordsmith: Enomoto Sadayoshi
Shizuoka prefecture
Forged in 1979 / Work at his 28 years old
Ha-cho (Edge length) 74.8cm
Sori (Curvature) approx. 2.18cm
Moto-haba (width at Ha-machi) approx. 3.48cm
Saki-haba (width at Kissaki) approx. 3.48cm
Kasane (thickness) approx. 0.79cm
Engraving: "Bo-hi" kaki-toshi on the both sides
Gold foil double Habaki
Wooden case (Shirasaya)
貞義刀匠は榎本栄一郎といい、昭和二十六年十月三十一日の生まれ。月山貞勝に学んだ父湧水心貞吉の仕事を間近に見て技を修め、昭和五十年新作刀展覧会に出品。結婚を機に竜義と改銘した(注)。相州伝の光強い沸の美観と、刀身上に躍動する地景や金筋に魅せられ、正宗、貞宗、則重、志津三郎兼氏、郷義弘等を範に一途に鎚を振るった。
この刀は、元先の身幅が極めて広く、重ね厚く、反り深く、棒樋が深く掻き通されて鋒も大きく延びた豪壮な姿で、正宗もかくやと想わせる相州伝の力作。鉄色明るく冴えた地鉄は、板目肌に太い地景が脈々と入り、粒立った地沸が厚く付く。刃文は浅い湾れを主調に互の目を交え、刃縁につぶらな沸が厚く付き、雪の叢消えの態をなして正宗を想起させ、太く入った沸足を遮るように金線、砂流しが幾重にも掛かり、刃中も沸付いて明るい。帽子は強く沸付き、浅く乱れ込んで小丸に返る。正宗と同じく剣形の茎は製作時そのままに白銀色に輝き、銘字が堂々と刻されている。上辺のみならず相州伝の深淵に迫らんとの不動の決意と旺盛な意欲の滲んだ正宗写しの力作となっている。
注…貞義は佐藤寒山博士の命名。しかし父貞吉と同じ「さだよし」は受注の連絡等で何かと不都合で、止む無く改銘に及んだという(弟榎本貞人刀匠談)。