大久保和平 神奈川県藤沢市
無鑑査
五十一歳作
刃長 九寸一分
元幅 九分七厘
重ね 二分七厘
彫刻 表裏 腰樋・添樋
金着二重ハバキ 白鞘入
平成六年神奈川県登録
Swordsmith: Okubo Kazuhira
"MUKANSA" swordsmith by NBTHK
Lived in Kanagawa prefecture
Forged in 1994 / Work at his 51 years old
Ha-cho (Edge length) 27.6cm
Moto-haba (width at Ha-machi) approx. 2.94cm
Kasane (thickness) approx. 0.82cm
Engraving: "Koshi-hi" with "Soe-hi" on the both sides
Gold foil double Habaki
Wooden case (Shirasaya)
和平(かずひら)師は昭和十八年横浜市六浦の産。昭和三十六年九月に宮入昭平師に入門し、昭和四十二年に独立。山城国の来國俊や備前一文字吉房、助真等の古名刀を目標に作刀に邁進。不慮の事故で作刀に専念できない時期があるも、それを乗り越えて昭和四十八年に再起。平成七年以降は新作名刀展の特賞を連続受賞し、平成十二年に無鑑査に認定された。その後も地鉄の鍛法、焼入の研究を深め、映りや地沸、地景等の景色が自ずから「出る」境地を目指して成果を上げたのであった。
遠くは大和當麻(たいま 注)を、近くは南紀重國を念頭に精鍛されたとみられるこの短刀は、身幅広く重ね厚く刃肉もたっぷりとし、中程から先の鎬地の肉が削がれて刺突の効用が高められた量感のある造り込み。地鉄は板目に杢、刃寄りにうねるような柾を配して鍛着が詰み、地景が流れるように入って肌目が落ち着き、小粒の地沸が厚く付いて潤い冴える。直刃の刃文は純白の小沸で刃縁きっぱりと冴え、匂で澄んだ刃中にも細かな柾肌が潜み、刃境には躍動感のある金線、砂流しが掛かり、物打辺りには小足が入る。金線を伴い掃き掛けて小丸に返る帽子の働きも顕著で、南紀重國風の出来となっている。今尚白銀色に輝く茎には銘字が堂々と刻されている同作短刀中の傑作である。
注…『光徳刀絵図集成』の大坂當麻の刀絵図に似ている。大坂當麻は前田利家から秀吉に献上され、大坂夏の陣で行方不明になり元和六年 発見され秀忠に献上された。秀忠の遺物分けで池田宮内少輔忠雄に下賜された(辻本直男『図説刀剣名物帳』参照)。