拵 黒石目地塗花唐草金銀蒔絵鞘短刀拵
家紋散図総金具　縁頭　銘　大塚春将(花押)
Koshirae Kuro ishimeji nuri Hana-karakusa kingin makie saya,tanto koshirae
"Kamon"chirashi fittings
Fuchigashira: Sig. Otsuka HARUMASA (Kao)

 相州鍛冶の祖と仰がれる正宗の短刀が収められていた、小さ刀様式の短刀拵。鞘は黒漆塗地に金粉で花唐草文を下地として塗り施し、この上に微細な石目地を重ねて陰蒔絵とし、花の部分のみに銀粉の重ね蒔絵を加えて銀黒独特の光沢を浮かび上がらせている。特筆すべきは下塗りの金が所々に滲み出ている様子で、意図してのものか衣擦れによるものか自然味があって美しい(注①)。平田春就門人大塚春将(はるまさ)の、赤銅魚子地高彫金色絵からなる家紋散しの一作総金具(注②)は、彫口が精密で細やかに、魚子地も小粒に揃って色合い黒く金の家紋を鮮明にしている。渋い色調の鞘と、出鮫柄、金具との採り合わせの妙味が示されている。

注①…帯擦れであろうか、一部に漆の剥落がある。 注②…目貫、縁頭、口金、小柄、笄、栗形、瓦金、折金、鐺、鐔（同作無 　　　文）の一作揃い。家紋の総数は四十九点。